生物用語解説

「は」ではじまる用語

[はい]embryo

多細胞生物発生初期における個体。動物では一般に,個体が摂食をはじめると胚とはよばない。カエルなどでは,桑実胚胞胚原腸胚までを初期胚,神経胚以降を後期胚とよぶこともある。

[はいいろみかづきかん]gray crescent

多くの両生類では,卵に精子が進入すると,卵の黒い表層細胞質が,精子が進入した側にずれる。そのため,精子が進入した側とは反対の側に,内部の暗色部が三日月状に透けて見える。これを灰色三日月環という。灰色三日月環が生じた側は背側になる。

[ばいおてくのろじー]biotechnology

生物がもつ機能を利用する技術。遺伝子工学(遺伝子組換えや遺伝子導入など),細胞工学(組織培養など)のほか,バイオリアクターやバイオセンサーの開発なども含まれる。

[ばいおーむ]biome

ある地域に生息するすべての生物のまとまり。陸上では植物の与える影響が大きいため,その環境における植生の,極相相観によって分類される。バイオームはおもに気温と降水量によって決まる。

[はいぐうし]gamete

合体して新しい個体をつくる生殖細胞。合体する配偶子が同じ形・大きさの場合は同形配偶子,形や大きさが異なる場合は異形配偶子という。異形配偶子のうち,特に,大形で運動性のないものを卵,小形で運動性のあるものを精子という。

[はいぐうたい]gametophyte

配偶子をつくる生物体で,核相は。配偶子は接合して胞子体をつくる。

[はいこん]dorsal root

脊髄の背側から出る神経の束。感覚神経からなる。腹根の対語。

[ばいすうせい]ploidy

近縁種などにおいて,染色体数が基本数の整数倍に増減している現象。重複するゲノムの数により,一倍体,二倍体,三倍体,…という。一般には二倍体が基本で,一倍体を半数体ともいう。

[はいにゅう]endosperm

有胚乳種子において,とともに種子を構成するもので,発芽するときに栄養を供給する。

[はいのう]embryo sac

被子植物の雌性配偶体。1個の卵細胞,1個の中央細胞,2個の助細胞,3個の反足細胞からなる。受精によって,卵細胞はに,中央細胞は胚乳になる。

[はいまく]embryonic membrane

動物のを保護し,環境を一定に保つ働きをする膜。羊膜外胚葉中胚葉),尿膜(内胚葉+中胚葉),しょう膜(外胚葉+中胚葉),卵黄のうの膜(内胚葉+中胚葉)がある。

[はくしつ]white matter

中枢神経系で,神経繊維が集まっていて白色に見える部分。灰白質の対語。大脳では内側(大脳髄質)が白質,外側(大脳皮質)が灰白質,脊髄では内側が灰白質,外側が白質。

[ばくてりおくろろふぃる]bacteriochlorophyll

非酸素発生型光合成を行う光合成細菌に含まれる光合成色素

[ばくてりおふぁーじ]bacteriophage

細菌に寄生して増殖するウイルス。単にファージともいう。遺伝情報として,DNAをもつものとRNAをもつものとがある。

[ばそぷれしん]vasopressin

間脳視床下部からのびる神経分泌細胞でつくられ,脳下垂体後葉で分泌されるホルモン腎臓の集合管における水の再吸収を促進し,血管を収縮させて血圧を上昇させる。

[はっけっきゅう]leukocyte

血液中の血球のうち,呼吸色素をもたず,があるものの総称。好中球,リンパ球,マクロファージ樹状細胞などが含まれる。

[はつげん]expression

遺伝情報をもとにして,タンパク質形質が現れてくること。遺伝子の情報をもとに,タンパク質が合成されることを遺伝子の発現という。また,遺伝子の発現によって,遺伝子型に沿った形質が現れてくることを形質発現という。

[はっこう]fermentation

酸素を用いないで,有機物(炭水化物)を分解してエネルギーを得る反応。酒やチーズ,しょう油など,古くから食品の製造に利用されてきた。

[はっせい]development

受精卵が分裂や分化を行いながら成体になるまでの過程。胞子や単為生殖によって生じた子が成体になる場合も含まれる。

[はーでぃ・わいんべるぐのほうそく]Hardy-Weinberg's law

個体数が十分に多く,自然選択突然変異も起こらず,任意交配で,外部との間に遺伝子の出入りもない集団では,遺伝子頻度は世代をくり返しても変化しないという法則。

[ぱふ]puff

染色体の一部がほぐれてふくらんだ部分。双翅目(ハエやカなどのなかま)の幼虫の唾腺,腸管,マルピーギ管などの巨大染色体で見られる。ある特定の遺伝子転写され,mRNAが合成されているところと考えられる。

[はんしゃ]reflex

一定の刺激に対して,単純な神経経路をへて決まった反応を行う現象。大脳とは関係なく応答するため,反応はすばやいが,定型的である。反射の中枢には,脊髄膝蓋腱反射など),脳幹(唾液の分泌,せき,くしゃみなど)がある。

[はんしゃきゅう]reflex arc

反射における興奮の伝達経路。刺激が受容器から感覚神経を経て反射中枢を折り返し,運動神経などを経て効果器まで伝わる経路をさす。

[はんせいいでん]sex-linked inheritance

性染色体上にある遺伝子による遺伝形質発現が性によって異なることがある。ヒトの血友病や1型2色覚(色覚多様性)は伴性遺伝の例。

[はんとうせい]semipermeability

溶媒分子は通すが,大きな溶質分子は通さない性質。半透性の膜を半透膜といい,細胞膜は半透性に近い性質を示す。なお,溶質分子も溶媒分子も自由に通す性質を全透性という。

[はんほぞんてきふくせい]semiconservative replication

DNAの2本鎖のそれぞれを鋳型とし,それぞれに相補的な新しい1本鎖DNAが合成されることで,2つの同じ2本鎖DNAが形成されること。複製されたDNAの2本鎖のうち,1本はもとのDNAのものなので,「半保存的」といわれる。