生物用語解説

「せ」ではじまる用語

[せいかつかん]life-cycle

生物の成長や生殖の段階を環状に表したもの。

[せいかつけい]life form

生物が環境に適応して示す,生活様式を反映した形態。

[せいげんこうそ]restriction enzyme

DNAの特定の塩基配列を識別して,その部分でDNAの2本鎖を切断する酵素。細菌には,ファージのDNAのような外来のDNAを切断して,感染・増殖を防ぐしくみがある。この現象を制限ということに由来している。

[せいさいぼう]spermatid, sperm cell

減数分裂をへてDNA量と染色体数が半減した雄の生殖細胞。精子をつくるものは,この細胞が精子に分化する。

[せいさんこうぞう]productive structure

光合成による物質生産から見た,植物の鉛直的な構造を生産構造といい,生産構造を相対照度とともに図に表したものを生産構造図という。生産構造図は,同化器官(葉)と非同化器官(根・茎・花)の一定面積内の重量を,地表からの高さごとに調べて作成する。

[せいさんしゃ]producer

栄養段階の1つ。無機物から有機物をつくり出す生物(独立栄養)。多くの生態系では,光合成を行う植物や微生物が,有機物の生産の大部分を担っている。

[せいしでんい]resting potential

ニューロンなどで,興奮していないときに生じている,細胞内外の電位差(約60mV)。細胞内の電位が細胞外に比べて低くなっている。

[せいしょく]reproduction

生物が新しい個体を生じる働き。配偶子をつくらない無性生殖(分裂・出芽・栄養生殖など)と,配偶子をつくる有性生殖とがある。

[せいしょくてきかくり]reproductive isolation

同じ場所に生息していても,何らかの遺伝的要因や,繁殖時期の違いなどによって,交配ができない状態。生殖的隔離によって,別の進化をたどることになる。なお,一般に,生殖的隔離の有無によって,同種か異種かを判定する。

[せいせんしょくたい]sex chromosome

性によって構成が異なる染色体。雌雄の分化に関係する。雄にあり雌にない染色体をY染色体,雌に2本ある染色体をX染色体という(雄がヘテロ接合体)。また,雌にあり雄にない染色体をW染色体,雄に2本ある染色体をZ染色体という(雌がヘテロ接合体)。

[せいぞんきょくせん]survival curve

横軸に時間や発育段階,縦軸に生存数をとって,発育とともに生存数がどのように変化していくかを表した曲線。通常は,生存数には対数目盛りを使用する。

[せいたいけい]ecosystem

ある地域について,生息している生物の集団(生物群集)と非生物的環境とを合わせたもの。構成する生物は,その役割から,生産者消費者あるいは分解者に分けられる。

[せいたいけいさーびす]ecosystem service

人間が生態系から受けるさまざまな恩恵。国連の主導によって行われた「ミレニアム生態系評価」では,生態系サービスを4つに分類しており,それぞれ供給サービス,調整(調節)サービス,文化的サービス,基盤サービスとよばれる。

[せいたいてきちい]ecological niche

食物や生息場所などの資源の利用のしかたなどにおいて,そのが占める地位をいう。必要な資源が似ているほど,生態的地位の重なりは大きく,種間競争は激しくなる。ニッチともいう。

[せいたいぴらみっど]ecological pyramid

食物連鎖において,上位の生物ほど,個体数,生物量,生産力は一般に減少する。そのため,下位のものから上位のものへと積み重ねていくと,その形はピラミッド状になる。このようすを表したものをいう。

[せいたいぼうぎょ]biophylaxis

体外環境には生体に害を与えるさまざまな要因がある。これらの要因からからだを守るしくみをいう。

[せいちょうきょくせん]growth curve

個体群の成長を表したグラフで,通常横軸に時間,縦軸に個体数をとって示す。食物や空間などの資源の制限から,一般に成長曲線はS字形になる。このときの個体数の最大値は環境収容力とよばれる。

[せいちょうりょう]growth increment

生態系の物質収支において,ある期間に生体が増加した量。

[せいとくてきこうどう]innate behavior

生まれつき備わっている動物の行動。走性や反射などがある。生後の経験などから獲得する行動は,習得的行動という。

[せいぶつぐんけい]

バイオーム

[せいぶつのうしゅく]biological concentration,bioconcentration

特定の物質が生物に吸収され,体内に蓄積して濃縮されること。水銀やDDT(殺虫剤の一種)などのように,生体内で分解されにくく,体外へ排出されにくい物質は,生物に吸収されると体内にとどまるため,食物連鎖の上位の生物ほど,その濃度が高くなる。

[せいめいひょう]life table, mortality table

ある生物種について,生存数がどのように変化していくかを発育段階ごとに示した表。

[せいりしょくえんすい]physiological salt solution

動物の体液と浸透圧が等しくなるようにつくった食塩水。摘出した組織などを生かしておく溶液などに利用する。

[せきさく]chorda (dorsalis)

発生初期に,神経管の直下に存在する管状の構造。中胚葉からつくられる。脊椎動物では,発生が進むにつれて退化・消失する。

[せきずい]spinal cord

脊椎動物で,延髄)に続き,背側を貫く中枢神経。脊髄神経(運動神経感覚神経交感神経)の通路であり,膝蓋腱反射や排尿・排便・発汗などの中枢。外側(皮質)は神経繊維が集まって白色,内側(髄質)は細胞体が集まって灰白色をしている。

[せだいこうたい]alternation of generations

生物の生活史の中で,単相世代と複相世代が周期的に交代すること。一般に,植物では胞子をつくるときに減数分裂を行って単相()になり,配偶子接合して複相(2)になる。

[せつごう]conjugation

配偶子が合体して1つの接合子になること。

[ぜつめつ]extinction

ある生物の分類群(など)が,子孫となる個体を残さずに滅びること。ある地域における個体群が滅びることを指す場合もある。

[ぜつめつきぐしゅ]endangered species

個体数が減少し絶滅の危機に瀕している生物種。絶滅危惧種はレッドリストにまとめられている。

[せんい]succession

植生相観や構成が,時間とともに移り変わっていくこと。

[ぜんかむかのほうそく]all or none《nothing》 law《principle》

反応が起こる刺激の最小値を閾値といい,閾値未満の刺激では反応しない。閾値以上の刺激を加えると反応の強さは一定である。このような反応のしくみをいう。

[せんくしゅ]pioneer species

乾燥や貧栄養に強く,土壌が発達していない遷移の初期に生育する植物。パイオニア種ともいう。

[せんしょくたい]chromosome

おもにDNA遺伝子の本体)とヒストンなどのタンパク質からできている。細胞分裂時には凝縮して棒状になる。

[せんしょくたいちず]chromosome map

染色体上の遺伝子の位置を図示したもの。組換え価が遺伝子間の距離に比例すると考え,いろいろな遺伝子の位置関係を求めてつくったものを遺伝学的地図(連鎖地図)という。また,染色体に欠失のある突然変異体を調べるなどして,染色体上の遺伝子の位置を求めてつくったものを細胞学的地図という。

[せんしょくぶんたい]chromatid

細胞分裂の前期から中期には染色体は縦に2本に裂けた状態で結合しており,そのそれぞれをいう。

[せんせいけいしつ]recessive character

ある対立形質について,ヘテロ接合体発現せず,ホモ接合体でのみ発現する形質顕性形質の対語。潜性形質に対応する遺伝子を潜性遺伝子という。

[せんたくてきとうかせい]selective permeability

細胞膜の透過性が物質の種類によって異なることをいう。膜にあるチャネル(特定の物質を通すタンパク質)や担体(特定の物質を運ぶタンパク質)が特定の物質だけを通したり,ポンプがエネルギーを使って特定の物質を運んだりすることによって生じる。

[ぜんとうせい]non-selective permeability

溶質分子も溶媒分子も自由に通す性質。全透性の膜を全透膜といい,細胞壁は全透膜である。なお,溶媒分子は通すが大きな溶質分子は通さない性質を半透性という。

[せんとらるどぐま]central dogma

DNAの塩基配列が写し取られてRNAができ,RNAの塩基配列をもとにタンパク質が合成される。このように,遺伝情報は一方向に流れるという原則。

[ぜんのうせい]totipotency

生物の細胞が,その個体のすべての組織や器官に分化して,完全な個体をつくる能力。受精卵は全能性をもつ。

[ぜんようたい]prothallium, prothallus

シダ植物の配偶体胞子が発芽してできる。卵をつくる造卵器と,精子をつくる造精器をもつ。