生物用語解説

「こ」ではじまる用語

[こうえねるぎーりんさんけつごう]high-energy phosphate bond

ATP分子内のリン酸どうしの結合は高いエネルギーが蓄えられているため,このようによばれる。ATPが分解してADPとリン酸になるとき,このエネルギーが放出される。そのため,ATPは生体内でのエネルギーのやりとりに適している。

[こうかき]effector

刺激に応じて反応を起こすための構造。作動体ともいう。筋肉や繊毛・鞭毛,発電器官,発光器官,分泌腺,発音器官,色素胞などがある。

[こうかんしんけい]sympathetic nerve

自律神経系を構成する神経の1つで,活発に活動するときなどに働く。副交感神経と拮抗的に作用して,器官の働きを調節する。一般に,中枢から出てすぐにシナプスがあり,節後繊維(神経節から作用する器官までの神経繊維で無髄神経)が長い。節後繊維末端から放出される神経伝達物質は,ふつうはノルアドレナリンだが,汗腺に対してはアセチルコリンが放出される。

[こうげん]antigen

リンパ球に異物として認識され,免疫反応を引き起こす物質。

[こうげんこうたいはんのう]antigen-antibody reaction

抗原抗体が特異的に結合して起こる反応。

[こうごうせい]photosynthesis

緑色植物,光合成細菌などが,光エネルギーを利用して,二酸化炭素を固定し,デンプンなどの有機物をつくること。炭酸同化の代表例。

[こうごうせいさいきん]phototrophic bacteria

光合成を行う細菌。電子源として水以外のものを利用する紅色硫黄細菌や紅色非硫黄細菌,緑色硫黄細菌と,電子源として水を利用して植物と同様の光合成を行うシアノバクテリアがある。シアノバクテリアは光合成細菌に含めないこともある。

[こうごうせいしきそ]photosynthetic pigment

光合成で光を吸収する色素。同化色素ともいう。クロロフィル,カロテノイドなどがある。

[こうしゅうせい]photoperiodism

光の明暗の周期に生物が反応する性質。多くの植物で,花芽形成は日長の影響を受ける。暗期が一定時間(限界暗期)より短いと花芽が形成される植物が長日植物,暗期が一定時間(限界暗期)より長いと花芽が形成される植物が短日植物である。

[こうじょうせい]homeostasis

脊椎動物では,体液(血液リンパ液・組織液)が細胞をとりまいて体内環境をつくっており,外部の環境が変化しても体内環境は一定に保たれる。これを恒常性(ホメオスタシス)という。

[こうじょうせん]thyroid gland

くびの腹側にある内分泌腺。甲状腺ホルモン(チロキシンなど)を分泌する。

[こうそ]enzyme

化学反応を促進するが,それ自身は反応の前後で変化しない物質を触媒という。酵素は,生体内でつくられる,タンパク質を主成分とする触媒(生体触媒)である。

[こうそ-きしつふくごうたい]enzyme-substrate complex

酵素活性部位基質が可逆的に結合したもの。酵素反応の第1段階。

[こうたい]antibody

体液性免疫において,抗原と特異的に結合する物質。主成分は免疫グロブリンというタンパク質である。

[こうへんさいぼう]guard cell

気孔を構成する1対の細胞葉緑体をもつ。孔辺細胞の浸透圧が大きくなると,吸水が起こり細胞がふくらむ。気孔側と外側とで細胞壁の厚さに差があるため,孔辺細胞はわん曲して気孔が開く。

[こうりんさんか]photophosphorylation

光合成において,光エネルギーをもとにして膜内外のH+濃度差を生み出し,これを駆動力としてATPを合成する反応。真核生物の光合成では,葉緑体チラコイド膜の内外でH+の濃度差を生み出し,この濃度差にしたがってH+ATP合成酵素の中を通ってストロマへ出ていくとき,ADPがリン酸化され,ATPが合成される。

[こきゅう]respiration

酸素を用いて,有機物(炭水化物,タンパク質,脂肪など)を無機物(二酸化炭素,水など)に分解して,ATPを得る反応。発酵よりも効率よくエネルギーを得ることができる。解糖系クエン酸回路電子伝達系の3つの過程がある。呼吸で得られるATPの大部分は,解糖系とクエン酸回路でつくられた電子を使って,電子伝達系で合成される。

[こきゅうきしつ]respiratory substance

呼吸によって分解される物質。グルコースなどの有機物。

[こきゅうしょう]respiratory quotient, respiratory coefficient

呼吸によって排出された二酸化炭素の体積と,吸収された酸素の体積との比。ウシのような植物食性動物の呼吸商は,呼吸基質が炭水化物なので1.0に近い。ネコのような動物食性動物の呼吸商は,0.7~0.8に近い傾向がある。コムギのようにデンプンが多い種子の呼吸商は1.0に近く,トウゴマのように脂質が多い種子の呼吸商は0.7に近い。

[こたいぐん]population

ある地域に生息する同種個体の集まり。その内部では,交配やさまざまな相互作用があり,個体間には密接な関係がある。

[こたいぐんみつど]population density

一定の面積(体積)あたりの個体数。

[こていけつごう]anchoring junction

細胞接着の一種で,隣接する細胞細胞膜を貫通するタンパク質どうしが結合し,それぞれの細胞内では細胞骨格が膜を貫通するタンパク質をささえている結合様式。固定結合には,接着結合,デスモソームによる結合,ヘミデスモソームによる結合などがある。

[こどん]codon

特定のアミノ酸を指定する,mRNA上の塩基3個の並びによる遺伝暗号。mRNAを構成する塩基には,ウラシル(U),シトシン(C),アデニン(A),グアニン(G)の4種類があり,塩基1個では4種類,2個では4×4=16種類,3個では4×4×4=64種類の組み合わせができる。タンパク質を構成するアミノ酸は20種類あるので,3個の塩基の組み合わせ(トリプレット)が必要になる。

[ごるじたい]Golgi body

細胞小器官の1つで,小胞体で合成されたタンパク質などに変化を加え,運搬したり分泌したりする。平たい円盤状の袋が重なった構造で,小胞(ゴルジ小胞)を伴っている。腺細胞(消化腺・内分泌腺)などでよく発達している。イタリアの組織学者ゴルジが発見した。

[こんせききかん]vestigial organ

本来の機能をはたさず,痕跡として残っている器官。ヒトにおける虫垂,耳の筋肉,尾骨など。痕跡器官は,その生物の祖先では機能していたと考えられるので,進化上の類縁関係を調べる手がかりになる。