生物用語解説

「し」ではじまる用語

[しあのばくてりあ]cyanobacteria

原核生物の一種,クロロフィルaをもつ。ユレモ,ネンジュモなど。

[しかくき]visual organ

光を受容する器官。光受容器ともいう。ミドリムシの感光点,ミミズの視細胞,昆虫の複眼,ヒトのカメラ眼など,さまざまな形態の視覚器が存在する。

[しかん]sieve tube

師管細胞が縦につながった構造。連結部である上下の細胞壁には多数の穴があり,細胞質の多くが失われている。光合成産物の通路になっている。

[しきゅうたい]glomerulus

腎臓の皮質にある構造で,毛細血管が毛糸玉のようにまとまっている部分。ボーマンのうがとり囲み,腎小体(マルピーギ小体)をつくる。腎小体と細尿管(腎細管)で腎臓の構造や機能の単位であるネフロン(腎単位)になる。

[じくさく]axon

ニューロンの細胞体から細長くのびる突起で,興奮は軸索上を伝わる(伝導)。神経終末(軸索の末端)は,次のニューロンや効果器シナプスという連結部で接続する。軸索は神経繊維ともよばれる。

[しじゅんかせき]index fossil

特定の地層に限って含まれ,地層のできた年代を推定できる化石。生存期間が短く,数多く産出し,分布範囲が広いことが条件である。

[ししょうかぶ]hypothalamus

脊椎動物の間脳の一部で,自律神経系や多くのホルモン分泌の中枢。

[しぜんじょうか]self-purification

河川などに流入した汚濁物質が,拡散や沈殿などの物理的作用,酸化や還元などの化学的作用,生物による分解などの生物的作用によって,その量を減らすことをいう。特に生物的作用によるものをさすこともある。

[しぜんせんたく]natural selection

同じ生物集団の中で,形質に変異が見られ,形質の違いがその環境での生存に影響を与えるとき,生存に有利な(適応した)個体の方が生き残りやすく,より多くの子を残すこと。

[しぜんめんえき]natural immunity

生まれつき備わっている免疫。感染初期,異物に対して非特異的に働く。マクロファージなどによる食作用や,ナチュラルキラー細胞による異常細胞の攻撃などがこれにあたる。

[しそうかせき]facies fossil

地質時代の環境(気温・水温・水深など)を推定できる化石。ある限定された環境にだけ生息していたことが条件である。

[しつがいけんはんしゃ]patellar tendon reflex

膝蓋腱を打つと,ひざ関節が伸びる脊髄反射。膝蓋腱は膝蓋骨(ひざ関節にある皿状の骨)につく腱。ここを打つと腱が伸び,それを筋紡錘が感知し,脊髄を経由してすぐに筋肉に指令が出され,ひざ関節が伸びる。

[しっかつ]inactivation

酵素が働きを失うこと。酵素の主成分であるタンパク質が高温などの条件で変性することによる。

[しなぷす]synapse

神経終末(軸索の末端)と次のニューロン効果器との連結部。シナプスには,シナプス間隙というすき間がある。神経終末のシナプス小胞から分泌される神経伝達物質が,次の細胞にある受容体に受けとられて,興奮が伝達される。このようにシナプスでは,興奮は必ず一定方向に伝達される。

[じべれりん]gibberellin

植物ホルモンの1つで,130種類以上見つかっている。成長の促進,開花の促進,子房の発育促進(種なしブドウに利用)などの働きがある。もともとはイネの徒長(むだな成長)から発見された。

[しゃかいせいこんちゅう]social insect

集団で生活をし,その中で分業が行われているような昆虫。労働カースト(えさを集めたり,巣を維持するために働くもの),生殖カースト(次世代を生むために働く)などがあり,形態的にも分化が見られる。ミツバチ,アリ,シロアリなどに見られる。

[しゃぺろん]chaperone

タンパク質の高次構造の形成に関わるタンパク質の総称。折りたたみ(フォールディング)を補助するもの,誤って折りたたまれたタンパク質を正しく折りたたむものなど,さまざまな種類がある。

[しゅ]species

生物分類の基本単位である。相互に交配可能な自然集団であり,ほかの集団から生殖的に隔離されていると定義される。

[じゅうぞくえいようせいぶつ]heterotroph

有機物をとりこみ,それを分解して生命活動のエネルギーを得ている生物。生態系における消費者(動物など)は従属栄養生物にあたる。生産者(緑色植物など)のように,外界からとり入れた無機物から有機物を合成する生物を独立栄養生物という。

[じゅうふくじゅせい]double fertilization

2個の精細胞がそれぞれ卵細胞,中央細胞と合体する受精で,被子植物に特有のもの。

[しゅかんきょうそう]interspecific competition

異種の個体群間で生じる,食物や生息場所などをめぐる競争

[じゅじょうさいぼう]dendritic cell

樹枝状の突起を出している免疫細胞。異物をとりこんで分解し,その一部を細胞の表面に提示する(抗原提示)。樹状細胞が,T細胞に抗原提示することで,適応免疫がはじまる。

[じゅじょうとっき]dendrite

ニューロンの細胞体には,細長く伸びた軸索以外に,分岐した短い突起が多数ある。この突起を樹状突起といい,他のニューロンの神経終末と連絡する場になっている。

[じゅせい]fertilization

卵と精子が合体して受精卵を形成すること。広義には,配偶子が合体することをさすこともある。

[じゅどうゆそう]passive transport

生体膜を通して,濃度の高い方から低い方へ物質が拡散していくこと。このとき,エネルギーを必要としない。生体膜を構成するリン脂質の間を通って通過する場合や,生体膜にはめこまれたタンパク質チャネル,担体)を通過する場合がある。逆に,エネルギーを使い濃度勾配に逆らって物質を輸送することを能動輸送という。

[しゅないきょうそう]intraspecific competition

同種の個体群内で見られる,食物や生息場所などをめぐる個体間の競争

[じゅようき]receptor

視覚器や聴覚器など,外界からの刺激を受けとる特別な構造。複雑なしくみをもたない単細胞生物が刺激を受けとる構造も含める。

[しゅようそしきてきごうせいふくごうたいぶんし]major histocompatibility complex molecule

細胞の表面にある,個体に固有な構造をもつタンパク質免疫において,自己成分と異物の識別に働く。

[じゅようたい]receptor

ホルモン神経伝達物質と特異的に結合する構造で,タンパク質でできている。細胞膜上に存在するものや,細胞内に存在するものがある。これらの物質と受容体が結合することで,シグナルが細胞に伝えられ,応答が起こる。

[じゅんいせい]dominance hierarchy

群れの中で,個体間に見られる優劣の序列で,その関係が一定期間持続しているもの。ニワトリのつつきの序列から発見された。

[しゅんかしょり]vernalization

低温処理によって花芽形成を促進させることをいう。たとえば,秋まきコムギは,低温にさらされないと花芽形成をしない。秋まきコムギの発芽種子を,約4℃の低温下で一定期間おくと,春にまいても開花結実する。バーナリゼーションともいう。

[じゅんけい]pure line

すべての遺伝子がホモ接合で均一になっている系統。何代自家受精をくり返しても同じ形質しか現れない。純系では,個体間に見られる差異は,環境によるものであり遺伝しない。

[じゅんせいさんりょう]net production

生産者独立栄養生物)が,ある期間に光合成により生産した有機物の総量から,その生物の呼吸による消費量を差し引いた量をいう。

[しょうかきん]nitrifying bacteria

亜硝酸菌と硝酸菌の総称で,化学合成を行う細菌。亜硝酸菌はアンモニウムイオンを酸化して亜硝酸イオンにするときに得られるエネルギーを,硝酸菌は亜硝酸イオンを酸化して硝酸イオンにするときに得られるエネルギーを利用する。

[しょうしんか]microevolution

世代を経て集団内の遺伝子頻度が変化したり,形質がわずかに変化したりするなど,新しいが生じるには至らない程度の小さな進化。一方,新しい種が生じるほどの大きな進化を大進化という。

[じょうせんしょくたい]autosome

性染色体以外の染色体。ヒトでは22対(44本)あり,そのうち1組は父親,もう1組は母親に由来する。

[しょうのう]cerebellum

脊椎動物のの一要素で,ヒトでは脳幹の背側に位置する。からだの平衡を維持したり,運動の調節を行ったりする。

[しょうひしゃ]consumer

栄養段階の1つ。生産者が生産した有機物を利用する生物。生産者を捕食する一次消費者,一次消費者を捕食する二次消費者などがある。

[しょくさよう]phagocytosis

細胞が外部から比較的大きな物質をとりこむ活動。物質を細胞膜の突出により包みこみ,膜小胞を形成して物質をとりこむ。特定の細胞(食細胞)だけが行う。液体は飲作用でとりこむ。

[しょくせい]vegetation

ある地域に生育している植物の集まり。

[しょくばい]catalyst

化学反応を促進するが,それ自身は反応の前後で変化しない物質。酵素は生体触媒といわれる。

[しょくぶつきょく]vegetal pole

卵や発生初期のにおいて,動物極の反対側の極。

[しょくぶつほるもん]phytohormone

植物体内で生産され,植物の成長や生理反応を制御する低分子の物質。オーキシンジベレリンアブシシン酸エチレンなどがある。

[しょくもつもう]food web

多数の生物種が,被食-捕食の関係で複雑につながっているようす。

[しょくもつれんさ]food chain

生物が被食-捕食の関係でつながっていること。

[じりつしんけいけい]autonomic nervous system

呼吸・脈拍・消化・分泌などは,無意識のうちに調節される。このような調節に働く神経系。自律神経系には,活発に活動するときに働く交感神経と,安静時や疲労回復時に働く副交感神経とがあり,互いに拮抗的に作用して,器官の働きを調節する。

[じんいぶんるい]artificial classification

生物の類縁関係など系統(進化に基づく生物の類縁関係)を考慮せず,形態や特徴などにもとづいた,便宜的・実用的な分類。系統分類の対語。

[しんか]evolution

現在の多様な生物は,起源を同じにする生物が,非常に長い時間をかけて,変化してきた結果である。このように,生物の形質や集団内での遺伝子頻度が世代をへるにつれて変化することを進化という。

[しんかくさいぼう]eukaryotic cell

核膜に包まれた核をもつ細胞細胞小器官が分化し,それぞれが機能をもっている。有糸分裂(紡錘体などの糸状構造を形成する分裂)を行う。また,細胞質流動やアメーバ運動も見られる。真核細胞からなる生物を真核生物という。

[しんかくせいぶつ]eukaryote

真核細胞からなる生物。単細胞生物多細胞生物もいる。原生生物,菌類,植物,植物,動物が含まれる。

[しんけいかん]neural tube

発生の初期に,神経板が閉じてできる管状の構造。外胚葉でできている。のちに,中枢神経をつくる。前部は分化し,脳から眼が誘導される。脳より後ろの部分は脊髄に分化する。

[しんけいけい]nervous system

神経組織ニューロングリア細胞などからなる)により構成される器官の集まり。

[しんけいさいぼう]neuron(e)

ニューロン

[しんけいせんい]nerve fiber

ニューロン軸索。軸索とそれをとりまく構造とをまとめて神経繊維ということもある。

[しんけいそしき]nervous tissue

神経を構成する組織ニューロングリア細胞(神経膠細胞)からなる。

[しんけいでんたつぶっしつ]neurotransmitter

神経終末から放出される物質。興奮性と抑制性とがあり,それぞれシナプス後細胞の脱分極または過分極を引き起こす。神経伝達物質はニューロンの種類によって異なる。おもなものに,グルタミン酸,GABA,アセチルコリンノルアドレナリンなどがある。細胞間で情報を伝達する物質にはホルモンもある。ホルモンは血液中に放出され,全身の標的細胞に作用するが,神経伝達物質はシナプスを介した特定の細胞に作用する。

[しんけいはい]neurula

おもに脊椎動物の発生初期において,神経板ができ始めてから神経管ができるまでの期間の

[しんけいぶんぴ(つ)さいぼう]neurosecretory cell

ニューロン神経細胞)がホルモンを分泌することを神経分泌といい,このような細胞を神経分泌細胞という。視床下部に細胞体がある神経分泌細胞の一部は,脳下垂体軸索をのばしてホルモンを分泌している。

[しんごうしげき]sign stimulus

かぎ刺激

[しんこうどうぶつ]deuterostome

成体の口が発生初期の原口に由来せず,口陥から生じる動物の総称。原口は肛門になる。後口動物ともいう。

[じんぞう]kidney

脊椎動物の排出器官。老廃物を尿として排出し,体液の浸透圧やpHなどを一定に保つ。

[しんとう]osmosis

半透膜を通して,溶媒が濃度の高い溶液の方へ移動する現象。

[しんとうあつ]osmotic pressure

半透膜を隔てて,一方に溶媒である水,他方に溶液を入れると,水が溶液側へ移動する。このときに半透膜にかかる圧力を浸透圧という。溶液側に圧力を加えて,ちょうど水の移動が止まるときの圧力の大きさに等しい。

[しんひしつ]neocortex

大脳皮質の一部で,ヒトで最も発達している部分。思考や判断などの認知機能や精神活動,感覚などに関わる。

[しんりんげんかい]forest limit, forest line

高山や高緯度などで,植物の生育に不適な環境になり,森林ができなくなる限界。垂直分布では,森林限界より上部が高山帯になる。