生物用語解説

「さ」ではじまる用語

[さいてきおんど]optimum temperature

酵素が最もよく働く温度。一般に化学反応は,温度が高くなるほど反応速度が大きくなる。しかし,酵素反応に最適温度があるのは,酵素がタンパク質でできており,高温でその立体構造が変化(熱変性)し,活性が低下していくからである。

[さいてきぴーえいち]optimum pH

酵素が最もよく働くpH。酵素はタンパク質でできており,pHによってその立体構造が変化するため,最適pHが存在する。

[さいとかいにん]cytokinin

植物ホルモンの1つ。カイネチン(細胞分裂の促進,側芽の成長促進などの働きをもつ)と同様の作用る物質の総称。

[さいぼう]cell

生物の構造や機能の基本単位。細胞膜で包まれた内部に,遺伝情報をもつDNAや,生命活動を行うための構造をもつ。をもつ真核細胞では,内部にさまざまな微細構造(細胞小器官)がある。フックが自作の顕微鏡によるコルク片の観察から発見し,詳細なスケッチを記載した「ミクログラフィア」(1665年)ではじめて細胞とよんだ。その後,シュライデンが植物の細胞説(1838年)を,シュワンが動物の細胞説(1839年)をとなえて,細胞説(生物は細胞を基本単位とするという考え)が完成した。

[さいぼうぐんたい]cell colony

緑藻類のなかまには,分裂した後にも,たがいが離れないでまとまって生活するものがある。このような生活形態を細胞群体という。

[さいぼうこっかく]cytoskeleton

タンパク質からなる繊維状の構造で,細胞内にはりめぐらされている。構造の維持,細胞運動,細胞接着,細胞内輸送などに関わっている。真核細胞の場合,おもにアクチンフィラメント,中間径フィラメント,微小管の3種類がある。

[さいぼうしつ]cytoplasm

細胞を構成する要素のうち,細胞壁を除いたものすべて。そこからさらに細胞膜およびミトコンドリア葉緑体などの細胞小器官を除いた液状成分を細胞質基質(サイトゾル)という。

[さいぼうしつりゅうどう]cytoplasmic streaming

細胞質が流れるように動く現象。細胞内の物質移動に重要な役割を果たしている。発達した植物細胞でよく観察される。原形質流動ともいう。

[さいぼうしゅうき]cell cycle

分裂してできた細胞が次の分裂を終えるまでの周期。分裂の準備をする間期と,核分裂と細胞質分裂が起こる分裂期(M期)に分けられる。間期はさらに,G1期(DNA合成準備期),S期(DNA合成期),G2期(分裂準備期)に分けられる。分化した細胞や分裂を休止した細胞はこの周期からはずれる。

[さいぼうしょうきかん]cell organelle

細胞の中にあって,特定の機能をもつ微細構造。ミトコンドリア葉緑体ゴルジ体,リソソーム,液胞などがある。

[さいぼうせいめんえき]cell-mediated immunity, cell(ular) immunity

抗原抗体反応による体液性免疫と異なり,免疫細胞が直接感染細胞を攻撃したり,食細胞を活性化したりすることによる免疫。リンパ球の一種であるヘルパーT細胞やキラーT細胞が関与している。

[さいぼうせっちゃく]cell adhesion

多細胞生物をつくる細胞の多くは,隣接する細胞や細胞外基質と結合している。このような結合を細胞接着(細胞間結合)という。細胞間の結合には,密着結合固定結合の接着結合とデスモソームによる結合,ギャップ結合がある。細胞-細胞外基質間の結合には固定結合のヘミデスモソームによる結合がある。

[さいぼうないきょうせいせつ]endosymbiotic theory

ミトコンドリアは好気性細菌が細胞内共生して,葉緑体シアノバクテリアが細胞内共生して生じたと考える説。

[さいぼうぶんれつ]cell division

1個の細胞(母細胞)が2個以上の細胞(娘細胞)に分かれる現象。多細胞生物では,体細胞分裂減数分裂がある。

[さいぼうへき]cell wall

細胞膜の外側をおおう丈夫な被膜。全透性を示し,細胞の形を保つ働きがある。植物細胞では,細胞壁はセルロースやペクチンなどでできており,原形質連絡とよばれる細い管で,隣り合った細胞と連絡している。

[さいぼうまく]cell membrane

選択的透過性を示し,細胞内外の物質の出入りに関係している。リン脂質の二重層にタンパク質粒子が埋めこまれた構造をしており,タンパク質は膜の中を移動する(流動モザイクモデル)。

[さよう]action

非生物的環境(温度・光・大気・土壌・水・無機養分などの生物以外の環境)が生物におよぼす影響。たとえば,光の強さや水温,無機塩類の量などは,ケイ藻類の個体数に影響を与えている。環境形成作用の対語。

[さようすぺくとる]action spectrum

いろいろな波長の光で,どれくらい光合成が行われるかを表したもの。光合成の作用スペクトルは,葉緑体吸収スペクトルとほぼ一致しており,吸収された光が光合成に使われていることがわかる。作用曲線ともいう。

[さるこめあ]sarcomere

横紋筋に観察できるくり返し構造の単位で,Z膜とZ膜の間の部分。筋節ともいう。

[さんかてきりんさんか]oxidative phosphorylation

有機物の分解(酸化)によって得たエネルギーで,膜内外のH+の濃度差を生み出し,これを駆動力としてATPを合成する反応。真核細胞呼吸では,ミトコンドリア内膜の内外でH+の濃度差が生じ,この濃度差にしたがってH+ATP合成酵素の中を通ってマトリックスに出ていくとき,ADPがリン酸化されてATPが合成される。

[さんてんこうざつ]three-point cross

連鎖している3つの遺伝子間の組換え価から,遺伝子間の距離や配列を求める方法。組換え価が遺伝子間距離に比例すると考えられることによる。