生物用語解説

「け」ではじまる用語

[けいしつ]character

「種子の形が丸い」「子葉の色が黄色」のような,個体に現れる遺伝的特徴。

[けいしつてんかん]transformation

ある株の遺伝子が別の株にとりこまれ,とりこんだ株の形質が変わること。たとえば,肺炎球菌には,S型菌(病原性)とR型菌(非病原性)がある。加熱して病原性を失ったS型菌をR型菌に混ぜると,S型菌の遺伝子がR型菌にとりこまれ,病原性をもった菌が生じるようになる。

[けいせい]nasty

植物が,刺激の方向とは無関係に屈曲する性質。光傾性,温度傾性,接触傾性などがある。刺激の方向に対して,一定方向に屈曲する性質を屈性という。

[けいせいそう]cambium

道管,木部繊維,木部柔組織などからなる木部と,師管,師部繊維,師部柔組織などからなる師部との間にある,分裂能力のある組織

[けいせいたい]organizer

発生初期において,のある部分が他の部分に働きかけて,一定の分化を引き起こすことを誘導といい,この働きをもつ部分を形成体(オーガナイザー)という。

[けいとうじゅ]phylogenetic tree

生物の進化の経路によって示される類縁関係(系統)を,樹状の図で示したもの。

[けいとうぶんるい]phylogenetic systematics

進化の経路によって示される類縁関係(系統)にもとづいた分類。系統を考慮せず,形態などの特徴にもとづいた分類を人為分類という。

[けつえき]blood

動物の体内を循環する体液の1つ。脊椎動物では,有形成分(赤血球,白血球,血小板)と液体成分(血しょう)とからなる。

[けつえきぎょうこ]blood coagulation, blood clotting

血液が凝集して,固まること。血液の流出を防ぐ働きがある。血液を凝固させると,液体部分(血清)と固まった部分(血ぺい)に分かれる。血ぺいは,フィブリンという繊維状のタンパク質が血球などをからめてできる。

[けっせいりょうほう]serotherapy

抗体が含まれている血清を,患者に注射する治療法。北里柴三郎とベーリングがジフテリアと破傷風に対して発見した。ヘビ毒などに対しても使われている。

[けっとう]blood sugar

血液中に含まれる糖(グルコース)。

[げのむ]genome

その生物の個体の形成や維持に必要なすべての遺伝情報(DNAの塩基配列)の1組。

[げんかいあんき]critical dark period

多くの植物では,花芽の形成は暗期の長さの影響を受ける。短日植物は,暗期の長さが一定時間よりも長くなると,花芽を形成する。長日植物は,暗期の長さが一定時間よりも短くなると花芽を形成する。このように,花芽の分化を決める一定の長さの暗期を限界暗期という。

[げんかくさいぼう]prokaryotic cell

核膜をもたず,細胞小器官の分化が見られない細胞。有糸分裂(紡錘体などの糸状構造を形成する分裂)を行わない。また,細胞質流動やアメーバ運動も見られない。原核細胞からなる生物を原核生物という。

[げんかくせいぶつ]prokaryote

原核細胞からなる単細胞生物。細菌(大腸菌,シアノバクテリアなど),アーキアが含まれる。

[げんきぶんぷず]anlagen plan

発生初期におけるの各部分が,正常な発生で将来どのような原基(器官のもととなる細胞の集まり)を形成するかを示した模式図。予定運命図ともいう。

[げんけいしつぶんり]plasmolysis

植物細胞を高張液に入れたとき,脱水が起こって収縮し,細胞膜細胞壁から離れる現象。原形質分離をした細胞を低張液に入れると,もとの状態に戻る。これを原形質復帰という。

[げんこう]blastopore

動物の発生初期に,の表層の細胞群が胚内に陥入する場所。

[げんこうはいしん]dorsal lip

原口上部の表部分。予定脊索域である。シュペーマンらは,イモリの初期原腸胚からとり出した原口背唇部を,他の胚の胞胚腔内に移植し,2つ目の神経管などの組織(二次胚)を誘導した。

[げんすうぶんれつ]meiosis

動物の配偶子形成や,植物の胞子形成で見られる,連続した2回の細胞分裂染色体の複製が1回であるため,細胞あたりのDNA量と染色体数が半減する。第一分裂前期に,相同染色体が対合して二価染色体をつくる。後期に,二価染色体が離れて,DNA量と染色体数が半減する。第二分裂では,複製されていた染色体が2か所に分かれて,最終的に4つの娘細胞ができる。一般に,第一分裂前期が最も長く,この期間に染色体の乗換えが起こる。

[けんせいけいしつ]dominant character

ある対立形質について,ヘテロ接合体において発現する形質潜性形質の対語。顕性形質に対応する遺伝子を顕性遺伝子という。

[けんせいのほうそく]law of dominance

雑種第一代では,親世代のいずれか一方の形質のみが現れるという法則。メンデルが発見した遺伝の法則の1つ。

[げんちょう]archenteron

多くの動物の初期発生で,陥入してできる腔所,もしくはその内壁。

[げんちょうはい]gastrula

動物の発生初期において,陥入が起こり原腸が形成される期間の胞胚の次の段階。脊椎動物では,原腸胚に続いて,神経胚をつくる。

[けんていこうざつ]test cross

顕性形質を示す個体には,ホモ接合体AA)とヘテロ接合体Aa)とがあり,表現型からでは区別できない。このような個体の遺伝子型を検定するために,被験個体(遺伝子型を調べようとする個体)と潜性ホモ接合体(aa)とを交雑すること。検定交雑で生じる子の表現型の種類と比率(分離比)は,被験個体の配偶子の遺伝子型の種類と比率を直接示す。

[げんていよういん]limiting factor

生命活動に必要な環境条件などは,ほとんどの場合は複数の要因が存在している。それらの要因のうち,その生命活動の進行を決定づけているもの。たとえば,光合成速度は,水・光・二酸化炭素濃度・温度などの影響を受けるが,これらのうちもっとも不足しているものが限定要因になる。