生物図表 用語解説

「し」ではじまる用語

[しあのばくてりあ]cyanobacteria

原核生物の一種で,クロロフィルaをもつ。ユレモ,ネンジュモなど。

[じくさく]axon

ニューロンの細胞体から細長くのびる突起で,興奮を伝導する。神経終末(軸索の末端)は,次のニューロンや効果器シナプスという連結部で接続し,興奮を伝達する。軸索とそれをとりまく構造とをまとめて神経繊維という。

[ししょうかぶ]hypothalamus

脊椎動物の間脳の一部で,自律神経系や多くのホルモン分泌の中枢。

[しぜんじょうか]self-purification

河川などに流入した汚濁物質が,拡散や沈殿などの物理的作用,酸化や還元などの化学的作用,生物による分解などの生物的作用によって,その量を減らすことをいう。特に生物的作用によるものをさすこともある。

[しぜんせんたく]natural selection

同じ生物集団の中で,形質に変異が見られ,形質の違いがその環境での生存に影響を与えるとき,生存に有利な(適応した)個体の方が生き残りやすい。このように,生物集団の変異の中から,自然によって選ばれるという考え方を自然選択という。

[しぜんめんえき]natural immunity

生まれつき備わっている免疫。感染初期,異物に対して非特異的に働く。マクロファージなどによる食作用や,ナチュラルキラー細胞による異常細胞の攻撃などがこれにあたる。

[しなぷす]synapse

神経終末(軸索の末端)と次のニューロン効果器との連結部。シナプスには,シナプス間隙というすき間がある。神経終末のシナプス小胞から分泌される神経伝達物質が,次の細胞にある受容体に受けとられて,興奮が伝達する。このようにシナプスでは,興奮は必ず一定方向に伝達される。

[しゅ]species

生物分類の基本単位である。相互に交配可能な自然集団であり,ほかの集団から生殖的に隔離されていると定義される。

[じゅうぞくえいようせいぶつ]heterotroph

有機物をとりこみ,それを分解して生命活動のエネルギーを得ている生物。生態系における消費者(動物など)は従属栄養生物にあたる。生産者(緑色植物など)のように,外界からとり入れた有機物を合成する生物を独立栄養生物という。

[じゅうふくじゅせい]double fertilization

2個の精細胞がそれぞれ卵細胞,中央細胞と合体する受精で,被子植物に特有のもの。

[じゅじょうさいぼう]dendritic cell

樹枝上の突起を出している免疫細胞。抗原をとりこんで分解し,抗原の一部を細胞の表面に提示する。樹状細胞が,未分化のT細胞に抗原提示することで,適応免疫がはじまる。

[じゅじょうとっき]dendrite

ニューロンの細胞体には,細長く伸びた軸索以外に,分岐した短い突起が多数ある。この突起を樹状突起といい,他のニューロンの神経終末と連絡する場になっている。

[じゅせい]fertilization

卵と精子が合体して受精卵を形成すること。広義には,配偶子が合体することをさすこともある。

[じゅどうゆそう]passive transport

細胞膜を通して,濃度の高い方から低い方へ物質が拡散していくこと。このとき,エネルギーを必要としない。細胞膜を構成するリン脂質の間を通って通過する場合や,細胞膜にはめこまれたタンパク質チャネル,担体)を通過する場合とがある。逆に,エネルギーを使い濃度勾配に逆らって物質を輸送することを能動輸送という。

[じゅようき]receptor

視覚器や聴覚器など,外界からの刺激を受けとる特別な構造。複雑なしくみをもたない単細胞生物や植物などが刺激を受けとる構造も含める。感覚器ともいう。

[じゅようたい]receptor

ホルモン神経伝達物質と特異的に結合する構造で,タンパク質でできている。細胞膜上に存在するものや,細胞内に存在するものがある。これらの物質と受容体が結合することで,シグナルが細胞に伝えられ,応答が起こる。

[じゅんせいさんりょう]net production

生産者独立栄養生物)が,ある期間に光合成により生産した総量から,その生物の呼吸による消費量を差し引いた量をいう。消費者分解者は,この量に依存している。

[じょうせんしょくたい]autosome

性染色体以外の染色体。ヒトでは22対(44本)あり,そのうち1組は父親,もう1組は母親に由来する。

[しょうひしゃ]consumer

栄養段階の1つ。生産者が生産した有機物を利用する生物。生産者を捕食する一次消費者,一次消費者を捕食する二次消費者などがある。

[しょくさよう]phagocytosis

細胞が外部から比較的大きな物質をとりこむ活動。とりこむ物質を細胞膜に結合させ,膜小胞を形成して物質をとりこむ。特定の細胞(食細胞)だけが行う。液体は飲作用でとりこむ。

[しょくせい]vegetation

ある地域に生育している植物の集まり。

[しょくばい]catalyst

化学反応を促進するが,それ自身は反応の前後で変化しない物質。酵素は生体触媒といわれる。

[しょくぶつほるもん]phytohormone;plant hormone

植物体内で生産され,植物の成長を調節する低分子の物質。オーキシン,ジベレリン,アブシシン酸,エチレンなどがある。

[しょくもつもう]food web

複数種の生物が,被食-捕食の関係で複雑につながっているようす。

[しょくもつれんさ]food chain

生産者が生産する有機物のもとに,生物が被食-捕食の関係でつながっていること。

[じりつしんけいけい]autonomic nervous system

呼吸・脈拍・消化・分泌などは,無意識のうちに調節される。このような調節に働く神経系。自律神経系には,活発に活動するときに働く交感神経と,安静時や疲労回復時に働く副交感神経とがあり,互いに拮抗的に作用して,器官の働きを調節する。

[しんか]evolution

現在の多様な生物は,起源を同じにする生物が,非常に長い時間をかけて,変化してきた結果である。このように,生物が変化してきた過程を進化という。

[しんかくさいぼう]eucaryotic cell;eukaryotic cell

核膜に包まれた核をもつ細胞細胞小器官分化し,それぞれが機能をもっている。有糸分裂(紡錘体などの糸状構造を形成する分裂)を行う。また,細胞質流動やアメーバ運動も見られる。真核細胞からなる生物を真核生物という。

[しんけいかん]neural tube

発生の初期に,神経板が閉じてできる管状の構造。外胚葉でできている。のちに,中枢神経をつくる。前部は分化し,脳から眼が誘導される。脳より後ろの部分は脊髄に分化する。

[しんけいけい]nervous system

脊髄運動神経感覚神経交感神経副交感神経などで構成される器官系。

[しんけいさいぼう]nerve cell;neuron(e)

ニューロン

[しんけいせんい]nerve fiber

軸索とそれをとりまく構造とをまとめていう。

[しんけいでんたつぶっしつ]neurotransmitter

神経終末から放出され,シナプス間隙を介して,次の細胞を興奮させる物質。神経伝達物質はニューロンの種類によって異なる。おもなものに,アセチルコリン,ノルアドレナリン,セロトニン,ドーパミンなどがある。細胞間に情報を伝達する物質にはホルモンもある。ホルモンは血液中に放出され,全身の標的細胞に作用するが,神経伝達物質はシナプスを介した特定の細胞に作用する。

[しんけいぶんぴ(つ)さいぼう]neurosecretory cell

ニューロン(神経細胞)がホルモンを分泌することを神経分泌といい,このような細胞を神経分泌細胞という。視床下部に細胞体がある神経分泌細胞の一部は,脳下垂体軸索をのばしてホルモンを分泌している。

[しんごうしげき]sign stimulus

かぎ刺激

[しんこうどうぶつ]deuterostome

成体の口が発生初期の原口に由来せず,口陥から生じる動物の総称。原口は肛門になる。後口動物ともいう。

[しんとうあつ]osmotic pressure

半透膜を隔てて,一方に溶媒,他方に溶液を入れると,溶媒が溶液の方へ移動する。溶液に圧力を加えて,溶媒の移動を阻止したとき,加えた圧力をその溶液の浸透圧という。浸透圧は,溶液の濃度や温度が高いほど大きくなる。

[しんりんげんかい]forest limit;forest line

高山や高緯度などで,植物の生育環境が不適になり,森林ができなくなる限界。森林限界より上部が高山帯になる。