Q&Aで学ぶ

6章 有機化合物

トランス脂肪酸とは何か?

分子内に二重結合をもつ有機化合物の異性体のうち,二重結合を構成する炭素原子に結合する同種の原子や原子団が,二重結合の両側で同じ向きにあるものをシス形,対角線上にあるものをトランス形という。トランス脂肪酸とは,トランス形の不飽和脂肪酸の総称である。

天然に存在する不飽和脂肪酸はシス形がほとんどであるが,油脂の加工の過程などでトランス形の不飽和脂肪酸が生じることがある。 最近,トランス脂肪酸の摂取による健康への影響が問題となっている。これは,トランス脂肪酸の過剰摂取で血液中の悪玉コレステロール(LDLコレステロール)濃度が大きくなる一方で,善玉コレステロール(HDLコレステロール)濃度が小さくなることにより,心筋梗塞など冠動脈性心疾患の発症リスクを高めるといわれているためである。

LDLコレステロールとHDLコレステロール

コレステロールは,血液中ではタンパク質との複合体であるリポタンパクとして存在し,全身に運ばれる。リポタンパクを密度よって分類したとき,$1.019\sim 1.063\mathrm{g/mL}$のものをLDL(low density lipoprotein 低比密度リポタンパク),$1.063\sim 1.21\mathrm{g/mL}$のものをHDL(high density lipoprotein 高密度リポタンパク)という。また,LDLと複合体を形成しているコレステロールをLDLコレステロール,HDLと複合体を形成しているコレステロールをHDLコレステロールという。

HDLは体内の余分なコレステロールを回収し,肝臓に運ぶ働きもあるため善玉ともいわれる。一方で,LDLにはこのような働きがないうえに,複合体中のコレステロールの割合も大きく,血液中のLDLの増加は余分なコレステロールの蓄積につながる可能性があるため,悪玉ともいわれる。


【参考】