Q&Aで学ぶ

3章 物質の状態と平衡

なぜ,-273℃以下にはならないのか?

物質を構成する粒子はつねに不規則な運動をしており,これを熱運動という。熱運動が激しいときほど温度は高い。逆に,低温では熱運動は激しくなくなる。したがって,熱運動の全くない状態が低温の限界になる。この理論上の限界の温度が$-273^{\circ}\mathrm{C}$である。

ケルビン(イギリス,1824~1907)は,$-273^{\circ}\mathrm{C}$を絶対零度とし,セルシウス温度と同じ目盛りの間隔をもつ絶対温度を導入した(1848年)。絶対温度$T[\mathrm{K}]$とセルシウス温度$t[^{\circ}\mathrm{C}]$との間には,$T=t+273$という関係が成り立つ。

化学では,温度を絶対温度で表すことが多い。たとえば,理想気体の状態方程式$PV=nRT$で,温度$T$は絶対温度である。したがって,絶対零度では,$PV=0$になる。これは,理想気体では粒子(気体分子)そのものの体積を$0$と考えているため,熱運動が全くなければ気体の体積も$0$になってしまうことを意味する。