Q&Aで学ぶ

1章 物質の構成

炎色反応は,なぜ起こるのか?

プリズムで太陽光を屈折させると虹が現れる。光は色によって屈折のしかたが異なるため,プリズムを使うことによって,光の成分を色の帯(スペクトル)として調べることができる。このようにして,光を調べることを分光という。

水素を封入したガラス管の中で放電を起こし,生じた光をプリズムで分光すると,特定の色が明るく光るため,線状になったスペクトル(線スペクトル)が観察できる。このように,放電によって特定の色の光が生じるのは,電子配置に関係している。

水素原子は,放電によるエネルギーを吸収して,電子がよりエネルギーの高い起動に移動する。この状態を励起状態という。電子が,励起状態から安定した状態(基底状態)に戻るとき,その差だけのエネルギーを光として放出する。したがって,放出される光の色は,基底状態と励起状態のエネルギーの差に対応する。

水素の場合,放出される光は,人が見える光(可視光)の範囲にあるため,上記のような線スペクトルとなって観察ができた。また,いろいろな励起状態があるため,線スペクトルも複数になる。

炎色反応では,ガスバーナーの炎の温度で金属が励起状態になり,その原子特有の色を放つ。アルカリ金属は,ちょうど可視光を放出するため,その色により原子を特定することができる。

無定形炭素は,なぜ炭素の同素体として扱われなくなったのか?

無定形炭素は,黒鉛,ダイヤモンド,フラーレンのようなはっきりとした結晶構造をもたない炭素の総称で,すすや石炭,コークス,木炭など,幅広い炭素が含まれる。また,実際には,微小な黒鉛が集まりとも考えられる。このように,単一な物質としての名称ではなく,実体は黒鉛であるため,黒鉛やダイヤモンドなどとともに,炭素の同素体として同列に扱わなくなってきていると思われる。

どうして放射線によってがんを治療できるのか?

がんは,正常な細胞の遺伝子がダメージを受けて異常になり,無制限に増殖する状態である。周囲の組織に浸みこんだり,体のほかの部分へ転移したりもする。

放射線は,遺伝子を破壊する。したがって,正常な細胞に放射線を多くあてると健康に悪い影響を与える。しかし,がん細胞に放射線をあててその遺伝子を破壊すれば,がんの治療になる。

実際にがん細胞に放射線をあてようとすると,標的のがん細胞だけでなく,放射線が通過する正常な細胞にもダメージを与えるが,がん細胞は遺伝子の修復力が弱いため,正常な細胞よりがん細胞の方が放射線の影響は大きい。そのため,放射線ががんの治療に利用される。

放射線を使った治療には,周囲の正常な組織を含めてがん細胞を切除する外科的な治療と比べ,正常な組織を残すことができるというメリットがある。

なぜ,電子殻はK殻から始まるのか?

電子殻は内側から順にK殻,L殻,M殻,・・・と名づけられている。なぜ,アルファベットで11番目のKという,中途半端なところから始まるのであろうか。

K,Lは,バークラ(C.G.Barkla)が1911年に書いた論文に由来する。バークラは,各元素に陰極線(電子)をあてたときに発生するX線(特性X線)が,2つの系列からなることを発見し,波長の短い方の系列をK,波長の長い方の系列をLとした。このX線は,エネルギーの高い電子殻に移動した電子が低い電子殻(K殻,L殻)へ戻るときにその差のエネルギーが放出されたと現在では理解されるが,当時はまだわかっていなかった。そこで,バークラは,より短い波長もしくは長い波長のX線の系列も存在するかもしれないと考え,A,Bではなく,アルファベット中ほどのK,Lを使ったのである。

電子殻