愛知の文学

匡衡と衛門

作品書名時代地域
匡衡(まさひら)と衛門(えもん)
<赤染衛門(あかぞめえもん)の事第五>
古本説話集
(こほんせつわしゅう)
平安時代 稲沢市

『古本説話集』は全二巻,平安時代後期頃の説話集である。『今昔物語集』と『宇治拾遺物語』に共通する話も幾つか収録されている。この説話集の写本は鎌倉時代中期のものが一冊伝わっているが,表紙も奥書(おくがき)もなく,書名は明らかでない。現在の書名は仮称である。上巻は本朝世俗説話四十六話を,下巻は仏教説話を二十四話収録している。
「赤染衛門の事」は上巻の第五話である。赤染衛門は平安時代を代表する女流歌人で,紫式部(むらさきしきぶ),清少納言(せいしょうなごん)らと同時代の人物である。藤原道長の妻倫子(りんし)に仕えた後,当時の代表的な漢学者であった大江匡衡(おおえのまさひら)と結婚した。大江匡衡は二度にわたって国守として尾張(おわり)に赴任(ふにん)しており,その際に赤染衛門も同行した。二人が結婚するまでの逸話(いつわ)と,尾張へ向かう道中での歌を紹介している。

  • 赤染衛門(あかぞめえもん)
    歌碑公園

愛知県稲沢市国府宮(こうのみや)駅の北西500メートルほどのところに,赤染衛門歌碑公園という小さな公園があり,二首の歌が刻まれている。赤染衛門とその夫大江国衡(おおえのまさひら)が尾張に到着したときに読み交わした歌である。