歴史のQ&A

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なぜ絵巻の1つの場面に,一遍上人が2回も出てくるの?

質問

「一遍上人絵伝(一遍聖絵)」の「地頭の館」の場面に,一遍が2回も出てくるのは,なぜなのでしょうか?

解答

これは,「異時同図法(いじどうずほう)」といって,同じ背景の中に異なる時間の情景を書き込む,絵巻物の手法です。

この場合,一遍が屋敷の主人(地頭)と向き合っている場面と,屋敷から立ち去る場面という,2つの場面がえがかれています。

「日本絵巻大成」(中央公論社)の解説を紹介しましょう。「庭の中には衣服をあらため,身を清めたこの家の主人が,一遍の念仏を聞いて,札をもらっている。終わると,くるりと背を向けて,あぜんとする一同をしりめに,すたすたと門前を立ち去る一遍であった。」

この「異時同図法」は,飛鳥時代につくられた法隆寺の玉虫厨子(たまむしのずし)の周りにえがかれた釈迦(しゃか)の図にも見ることができます。「木の枝の上にいる釈迦は,飢(う)えた虎の母子のために身を投げて,自身の体をあたえた」という場面が,1枚の絵にえがかれています。その中には枝の上にいる釈迦と,身を投げて落下する釈迦がえがかれています。確かめてみてください。

1枚に時間をえがこうとしたんだね。