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なぜ「解体新書」に前野良沢の名前がないの?

質問

「解体新書」の訳者に,前野良沢の名前がないのはどうしてででしょうか?

解答

教科書や辞書で,「解体新書」のところを見てみましょう。翻訳に努力した人は,杉田玄白・前野良沢・中川淳庵(じゅんあん)・石川玄常(げんじょう)・桂川甫周(ほしゅう)となっていませんか。

しかし,「解体新書」そのものには,杉田玄白・中川淳庵・石川玄常・桂川甫周の名前しかありません。

これはどういうことなのでしょうか。

「解体新書」の翻訳作業は,良沢の家に玄白や淳庵などが集まり,良沢の指導のもとに行われました。

玄白は,人体の内部構造について無知な日本人の医者に,早く「ターヘル・アナトミア」を紹介しなければと,考えていました。しかし良沢は,翻訳の完成度が低いことに納得がいきませんでした。

そこで良沢は,発行を急ぐ玄白に,自分の名前の掲載を断りました。それほどに良沢という人は,正確さや完璧(かんぺき)さにこだわる人だったのです。

玄白も不十分な点があることは感じていたようで,のちに,弟子の大槻玄沢(おおつきげんたく)に改訂を命じています。

翻訳の苦労については,杉田玄白「蘭学事始」という回想録にくわしく述べられています。