歴史のQ&A

なぜ歴史を勉強するの?

質問

歴史の勉強って,決まりきったことを覚えるだけで,つまらない。どうして勉強するのでしょうか?

解答

歴史の勉強は,過去のできごとを,そのまま覚えるだけの勉強ではありません。

自分の将来を考えるときに,自分が生まれ育ってきた道をふり返りながら,どのような選択や努力をするべきかを考えるのと同じように,人類が歩んだ道をふり返ることで,現在を見直したり,将来のためにどのような選択や努力をするべきかを考えることも,歴史の大切な勉強です。

では,歴史を勉強するときに注意することは何でしょうか。

まず,本に書かれていることは,だれの目で見て書かれているのかを考えましょう。1本の木もいろいろな人が見ると,変わって見えます。高さに注目する人,枝ぶりに注目する人,葉の色に注目する人…。同じように,例えば,江戸時代という社会を,大名の立場で見るか,漁民の立場で見るか,農家の少女の立場で見るか,俳人の立場で見るか,僧の立場で見るかと考えてみると,江戸時代と一言でいっても,さまざまな歴史像がえがけるのです。個人として振り返るか,日本人としてか,人類としてか,地球人としてか,などのいろいろなくくりで見直すと,ちがったものが見えてきます。どれが正しいかというのではなく,多様な歴史がえがけることを知っておきましょう。

ところで…

イタリアの歴史哲学者クローチェは,「あらゆる“歴史”は現代の歴史である」「“歴史”は未来のためのものである」

といっています。彼のいう"歴史"は,「記述された歴史」「歴史の本」「現代人を通して語られる歴史」という意味でしょう。私たちの現代的な関心にもとづいて,えがかれた歴史ということです。過去の歴史の本も同じように,その時代の関心にもとづいてえがかれたものと考え,その関心が何であったのかを確かめながら,読み学ぶ必要があるといっているのです。

反省も,はげましもあるね。

しかし,1人よがりの勝手な見方は,いけません。歴史学上の事実は,歴史学者や研究者が,しっかり多方面から検討しているので,その成果をふまえるべきでしょう。

「関ヶ原の戦いが1600年にあって,東軍と西軍にわかれて戦った」ということは,変えられない事実であるように。