高校生のための国語のおすすめ30冊

明治を生きた男装の女医 高橋瑞物語

明治を生きた男装の女医 高橋瑞物語

ノンフィクション 私のおすすめ30冊 女子の医学部進学 そして医者へ

中央公論新社

田中ひかる

命を救うのに男も女も関係ない

嘉永五年(1852)年、今の愛知県西尾市に生まれた高橋瑞(たかはしみず)。

学びたいと思っても「女に学問は必要ない」と一蹴される時代。

女性は医学校に入学することすらできなかった時代。

学ぶことを最初はあきらめようとした瑞だが、もどかしい思いを抱えているときに目の当たりにした姪の死。家を飛び出した瑞を、何も言わずに世話してくれた見ず知らずの妊婦も、俗説を信じる“トリアゲババ”の分娩により命を落とす。あきらめかけていた瑞だが、「知識に基づいた処置をして妊産婦や赤ん坊を一人でも多く救いたい」と思い直す。

最初は産婆として活躍する瑞も、多くの出産に立ち会ううちに「産婆では足りない、医者になりたい」と思い、医者を志すようになる。しかし、医者になるのに立ちはだかる「女性である」という壁。その壁を取り払おうと、とにかく行動を起こす瑞。奇しくも同時期に同じような行動を起こしていた女性が何人もいた。彼女たちの行動が、日本を変えようとしていた。

今、私たちに当たり前のように与えられている「権利」を勝ち取るまでの、ひたむきな熱意と覚悟を描いた作品です。

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「明治を生きた男装の女医 高橋瑞物語」にも登場する、女医第一号の荻野吟子の物語。瑞とは異なる境遇で生きた荻野も、苦しむ人を救いたい気持ち、女性を助けたいという気持ちは同じ。