高校生のための国語のおすすめ30冊

勝手にふるえてろ

勝手にふるえてろ

小説 私のおすすめ30冊 恋愛小説 映画化された作品

文春文庫(文藝春秋)

綿矢りさ

大好きな人、あなたの目にはどんなふうに見えていますか?

何でもいいよ。あなたが大好きな人やモノを思い浮かべてみて。どんな風に見えた? きっとクールで客観的にそれを見ていたわけではないよね。きっとそれはあなたのときめくような想いで飾られていたんじゃないかな。

26歳の会社員・良香(よしか)は、中学2年生の時のクラスメイト「イチ」に片思いを続けている。奥手な良香は自分から「イチ」に声を掛けられなかった。しかし、クラスの誰よりも「イチ」をよく観察し、誰も知らない彼の魅力に気づくことができた。だからこそ、良香は12年間もずっと「イチ」を(もちろん心の中の)彼氏にすることができた。そんな時、同じ会社の好きでもない「ニ」から人生初の告白をされてしまう。良香は、心の中の「私」が好きな彼氏と現実の「私」を好きな彼氏の間でぐらぐらと揺れることに……。

この小説のナレーターを務める良香の語りは、彼氏を「イチ」とか「ニ」のように番号で呼んでいるみたいに、なんだか上から目線でジコチューな感じ。だから、この小説を読んでいると、独りよがりで妄想がちな主人公の恋愛相談に付き合わされているかのよう。けれど、真摯に好きなものを見つめようともがく良香の語りを読むことは、好きなモノを「見つめる」ためのレッスンになるのかもしれない。

次に読みたい本

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小説

河出文庫(河出書房新社)

綿矢りさ

綿矢りさの代表作の一つ。

批評の教室―チョウのように読み、ハチのように書く

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評論

ちくま新書(筑摩書房)

北村紗衣

小説の読みの幅を広げる「批評」についての入門書。