高校生のための国語のおすすめ30冊

ものぐさ精神分析

ものぐさ精神分析

評論 私のおすすめ30冊 日本近代を精神分析!? わたしたちは幻想に生きている 著者の頭の中を覗きたい

中公文庫(中央公論新社)

岸田秀

わたしたちは「本能のこわれた動物」である

とにかく衝撃の一言に尽きる。「この本を読む前と読んだあとでは、見える世界が変わる」とはよく言ったものだが、本当にその体験ができたのだからとにかく読んでほしい。私の拙い感想文よりも、衝撃を受けた文章(フレーズ)をそのままここに連ねた方がいくらか効果的だと思うので、以下本文から引用する。

「時間は悔恨に発し、空間は屈辱に発する」「まず、自己嫌悪という以上、自分を嫌悪する自分と、自分に嫌悪される自分とが存在するわけである」「人間は、おとなになってからも、猿で言えば胎児的とされる特徴を多分に保持している」「幻想我と現実我の対立を最終的に解決するには、むしろ、現実我を消滅させる方が容易である」

私たちが少なからず感じている現実の生きにくさは、そもそも倒錯した私たちが正常という幻想にしがみつこうとしていることが原因だ。私たちはそもそも「こわれた生き物」なのだ。「歴史について」「性について」「人間について」など、多岐にわたって独特な視点から鋭い考察がなされている。この本が、あなたの人生観を変える一冊になること間違いない。

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岸田秀

「本能が壊れた」人間の「壊れた性本能」を分析。実に面白い。