中学生のための国語のおすすめ50冊

九月の空

九月の空

小説

角川文庫

高橋三千綱(たかはしみちつな)

<青春期特有のストイシズム(かたくなな思い)>

『九月の空』は第79回芥川賞を受賞しました。この本はほかに,『五月の傾斜(けいしゃ)』『二月の行方(ゆくえ)』の2編を収録しています。これら3編を通して,主人公はこの春高校に入学したばかりの15歳の少年勇です。勇は,剣道部に所属していて,かなりの腕前。剣道を通して感じる緊張感のみを信用し,自分自身にあまえを許しません。他人のことを気にしすぎて知らないうちに「他人に同化し,自分が溶(と)けてしまうこと」を恐れて,何があっても自分を見失うことがないよう「自分の胸の内にある心棒(しんぼう)」を太く強く育てたいと考える勇のストイックさに共感を覚える人も多いのではないでしょうか。(Hさん)