中学生のための国語のおすすめ50冊

天然理科少年(てんねんりかしょうねん)

天然理科少年(てんねんりかしょうねん)

小説

文藝春秋

長野まゆみ(ながのまゆみ)

<心身ヲ研(と)ギ睛(め)ヲ澄(す)マシタ少年ヲ求ム>

父の放浪癖(ほうろうへき)のために転校を繰り返す少年が,ある山間の町で体験する不思議なお話です。「鬼胡桃(おにくるみ)の印鑑」「檸檬水(れもんすい)の瓶(びん)を溶(と)かして作った笛」「さまよえる湖」などの小道具で,幻想(げんそう)的な世界に踏み込んでいく少年が,こがらな少年の正体をつきとめると,それは……。一つの章が終わると,『星宿鳥』『流星火毬』『孔雀船』『雪玻瑠』という詩が,あなたを待っていて,話に「天然自然」のエッセンスを加えています。一番身近にいて,日ごろ関心も抱かない父親に,こんなに大事にしている思い出があるなんて。読み終わった後,思わず自分の父親の顔をのぞきたくなる小説です。(Wさん)