中学生のための国語のおすすめ50冊

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小説

河出書房新社

綿矢りさ(わたやりさ)

<もう十七歳だと焦る気持ちと,まだ十七歳だと安心する気持ちが交差する。>

「受験勉強シテル?」「マッサカー」と相手の気持ちを探り合いながらの友だちづきあいに疲れて,不登校を決め込んで,自分の部屋のすべての家具と小物を捨てた女子高生の「私こと野田朝子」。コンピューターを捨てるときに,ゴミ捨て場で大人びた小学生の青木かずよしと出会った。「私」は自分の捨てようとしたコンピューターを再生してくれたかずよしと,チャットで一儲(ひともう)けすることになる。青木家の押し入れの中で,平日の昼間コンピューターを操作してオトナの世界を覗く「私」。

女子高生の「私」にとって,チャットでのやりとりは言葉遊びに過ぎないが,現実と全く異なる世界だったからこそ受験勉強に疲れた身をゆったりと置くことができたのかな。とても小学生とは思えないかずよしとのやりとりも,母や青木夫人との会話もユーモラスで楽しい作品だ。(Wさん)