中学生のための国語のおすすめ50冊

ウエンカムイの爪(つめ)

ウエンカムイの爪(つめ)

小説

集英社文庫

熊谷達也(くまがいたつや)

<髪の毛が一斉に逆立ち,喉(のど)の奥から悲鳴がもれた>

平和に満たされた私たちの日常生活。ともすれば生きる実感のない時間が流れていくように感じられることもあるのではないでしょうか。生きていく希望がもてないと感じることもあるかもしれません。しかし,ひとたび原始の恐怖とともに生命の危機に遭遇(そうぐう)すれば,そうした日ごろの「愚痴(ぐち)」はうそのように消え去ります。そのような可能性を,北海道の森は秘めています。国内最強の陸上動物であるヒグマに出会ったとき,人はただ生きたいと心底願い,知らない自分に出会うことでしょう。また,この小説には何よりも手に汗握る面白さがあります。きっと君たちは,最初の一行から北海道の原生林の中に誘い込まれていくことでしょう。(Mさん)