中学生のための国語のおすすめ50冊
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温室デイズ
小説
角川書店
<ほんのちょっと,レンガに頭ぶつけてみて,この温室から抜け出せた気がした。>
荒れた中学校で3年生の2学期,「そろそろうちらのクラスだけでも,ちゃんとしたらいいんじゃないかなって気がするんです。」とクラスのみんなの前で公言してしまったみちる。翌日から壮絶ないじめが始まった。そんな彼女に何もできない自分を責め,相談室登校,フリースクール,精神科のカウンセリングにまで進んでしまう優子。卒業式までの半年の間,二人の少女が苦闘する姿が描かれている。章ごとに交替で語り手になることが,立場の違いを際だたせ,いっそうリアルに彼女たちの気持ちが伝わってくる。小学校でのいじめの様子,いじめがエスカレートしていく過程,いじめる側といじめられる側の感じ方の違いなども,とてもリアルだ。
「学校に行かなくても大丈夫にするのが先生・・じゃなくて,ちゃんとみんなが普通に教室で過ごせるようにしてよ。・・」「まだ,あの教室でがんばれる。」というみちるの言葉にはだれもが心を動かされ,いつのまにかみちるを応援しているはずだ。ただ,きれいに一件落着という終わり方ではないところが,あなたの中にもやもやした感じを残すかもしれないね。でも,それは,実際に問題解決というわけにはいかない現実を,この小説が見せてくれるのだと思うよ。(Tさん)