中学生のための国語のおすすめ50冊

とるにたらないものもの

とるにたらないものもの

随筆

集英社

江國香織(えくにかおり)

<いつか,トライアングルを一つ買いたいと思っている>

輪ゴム,下敷き,鉛筆・・。身の回りにある様々な道具たち。使いたいときに引っ張り出され当たり前に働いて,役目が終わればまた放っておかれる。江國さんは,そんな物たちに繊細(せんさい)で心温まる眼差(まなざ)しを向けています。そうした感覚の多くは,君たちの年代までの経験によって形作られたようです。例えば「トライアングル」。筆者は,小学1年生の音楽発表会で出会った時「この楽器とは相性がいい」と直感し,大人になっても「心細い気持ちで弾くとほんとうに心細い音がでる」と愛し続けています。高価でも特別でもなく,いつも傍(かたわ)らにいる「ものもの」との関係をもっと大切にしなくては。そう思わせる味わい深いエッセイです。(Mさん)