中学生のための国語のおすすめ50冊

永遠の出口

永遠の出口

小説

集英社

森絵都(もりえと)

<振り返ると,悩みや迷いを来る返しながら,大人への入り口へ近づいていたんだ>

子どものころ「永遠」という響きに弱かった私(岸本紀子)が,(大人にとってはささいなことかもしれない)さまざまな出来事を通して悩んだり迷ったりして大人になっていく話。特に小学生から思春期にかけての紀子の心の動きがリアルで,共感できる部分が多い。「十二歳の私はこの一瞬,自分の立っている今だけに集中し,何の混じりけもないさびしさに砕けて散りそうだった。」「みんなが少しずつ壊れていて,その欠陥を見つめるよりは騒いでごまかすことに熱心だった。相手の本心が見えない不安より,うまく繕(つくろ)っている仮面が崩れる恐怖のほうが強かった。」ただ,この話は大人になった紀子が躓(つまづ)きながら生きてきた「青々とした時代」を振り返って書いていることを忘れないで読んでください。今あなたが「青々とした時代」の最中なら,自分の思いとの違いに気づくかもしれませんね。(Wさん)