中学生のための国語のおすすめ50冊

放課後の音符(キイノート)

放課後の音符(キイノート)

小説

新潮社

山田詠美(やまだえいみ)

<にがいけれども,チョコレートのほろにがさとも違う,本当の恋>

幼なじみの純一を恋愛の相手として見ていないはずの「私」ですが,一心に純一を想っているリエのじゃまをしてしまいます。心の中ではもっと自立した,「べたついた関係をもたない」大人の恋をしたいと願っているのに。

そんな高校2年生の「私」は,放課後いろいろな友だちの恋の話を聞きます。アメリカンスクールに行っている雅美や,「美しい気持ちの時の涙って,鏡のようになる」というマリ,そして,彼を28歳のレイコさんにとられたけれど,「赤い口紅が似合うようになったら,サエキくんをものにしてみせる」と言い切るカズミなど,それぞれ「私」が体験しない恋をしています。「私」は彼女らの話を聞く中で,一生懸命に自分を磨こうとしている「本当の大人」にあこがれ,大人の香水の似合う恋がしたいと考えるのです。

この本は,本当の恋について考えたい人には役立つことでしょう。単なる甘いものではない,大人の恋の一面が見えてきます。(Wさん)