中学生のための国語のおすすめ50冊

博士の愛した数式

博士の愛した数式

小説

新潮社

小川洋子(おがわようこ)

<「220」と「284」は神の計らいを受けた絆で結ばれた「友愛数」なのです!>

記憶が80分しかもたない元大学教授で数学者の「博士」と家政婦の「私」,そして,私の息子で小学生の「ルート」が共に過ごした日々をつづったお話です。

博士の記憶の蓄積は交通事故に遭った1975年で終わっています。75年以前に自分が見つけた定理は覚えていても,昨日食べた夕食のメニューも会った人の顔も覚えることができません。毎朝,博士の家を訪れる私は,博士にとって常に初対面の人間なのです。75年以降の記憶を他人と共有できない博士は,その悲しい事実をおおい隠すために数の話をし,数によって他人との関係を結ぼうとします。一方,私とルートも,博士にその悲しみを思い出させないように,何度でも博士の言葉に耳を傾けます。

博士の口を通して語られる「素数」「完全数」「友愛数」は単なる数字ではなく,美しくロマンチックなものに姿を変えてしまいます。数に対する認識を変えられると同時に,人と人との関わり方について考えさせられるお話です。 (Tさん)