中学生のための国語のおすすめ50冊

墜落の夏(ついらくのなつ)

墜落の夏(ついらくのなつ)

記録

新潮文庫

吉岡 忍(よしおかしのぶ)

<一行の中に人間のかがやきが‥>

1985年,520人の命とともに群馬県の山中に消えた旅客機・日本航空123便。毎年墜落した日には,墜落現場となった山に多くの遺族たちが登る姿がテレビで報じられてきました。尾翼(びよく)を失った日航機は,上昇と下降を繰り返しながら,何と30分間も関東一円を飛び続けていたのです。コントロールできない機体とのすさまじい格闘の一瞬一瞬が,ボイスレコーダーに残された操縦室の会話を通して目(ま)の当たりに再現されています。また,客席ではその状況下でも,他の乗客や家族のことを思いながら最後の時を見つめる人々の姿が,発見されたメモなどから鮮やかに浮かび上がってきます。そうした人々の姿から,人間への熱い思いがこみ上げてくるでしょう。(Mさん)