中学生のための国語のおすすめ50冊

空飛ぶ馬(そらとぶうま)

空飛ぶ馬(そらとぶうま)

小説

東京創元社

北村薫(きたむらかおる)

<ニュータイプの推理小説>

普通,推理小説というと,いかにも探偵(たんてい)らしい探偵が密室で起こった殺人事件を解決していくというようなたぐいのものを思い浮かべる人が多いと思いますが,この作品はちょっと違います。

まず,解決されるなぞが,殺人事件のような恐ろしいものではなく,怖い夢を見る理由だとか,三人組の女の子たちが争ってたくさんの砂糖を紅茶に入れる理由などのごくごく日常的なものであるということ。二つめが,なぞ解き役を務めるのが落語家で,語り手がその落語家のファンの女子大生であるということ。

なんとも穏やかな雰囲気でいて,しかしそのなぞ解きの過程は本格的なミステリーに一歩もひけを取らない。新しいタイプの推理小説の誕生です。(Hさん)