中学生のための国語のおすすめ50冊

四十一番の少年

四十一番の少年

小説

文春文庫

井上ひさし(いのうえひさし)

<それは悪夢とも言える絶望的な日々の始まりだった>

「それからの利雄は,昌吉に飼われた犬のようになった。」

ここには,作者の実際の悲惨な児童福祉施設時代をモチーフにした3作品が収められています。悪夢とも言えるあまりにも絶望的な日々や自らが抱き続けた恐怖と共に,敏感にならざるをえなかった人の心の微妙な動きや,どうしても身につける必要があった生きのびるための手段が,小説の名を借りて描き出されています。

本当の悲しみを味わった者しか,本当に人を思いやったり,優しくしたりすることができない…と,言われることがあります。数々の楽しくて心温まる小説や戯曲(ぎきょく)を描き出してきた作者の,もう一つ奥底にある「井上ひさし」と出会うことができる一冊です。(Oさん)