中学生のための国語のおすすめ50冊

鹿の王

鹿の王

小説

角川文庫

上橋菜穂子

謎の伝染病が流行する世界で繰り広げられる壮大なファンタジー

 東乎瑠(ツオル)帝国の奴隷が働かされていた岩塩鉱を、ある夜、恐ろしい黒犬の群れが襲います。犬に噛まれた奴隷や兵士は伝染病を発症し、次々と死んでいきます。その中で、なぜかひとり生き残った男ヴァンと幼い少女ユナ。二人の冒険の旅が始まります。時を同じくして、天才医術師のホッサルは、謎の病の治療法を懸命に探していました。全く違う世界に生きていたはずの彼らの運命はいつしか交錯していきます。

 歴史や文化、宗教の異なる多様な民族がそれぞれの思惑を抱えながら駆け引きし、覇権争いを繰り広げていく壮大なファンタジーです。自分や愛するものが生きる世界を守るため、必死にもがく人間たちの姿に圧倒され、生と死、病との共存について考えさせられます。登場人物も多く、複雑な内容の話ですが、ひとたびその世界に入ると物語の力にぐいぐい引っ張られていくことでしょう。そしてこの物語には戦争や病で苦しむ世界が平和になるための答えが隠されています。その答えを本の中から、あなた自身が見つけ出してください。(Sさん)