中学生のための国語のおすすめ50冊

この星でいちばん美しい愛の物語

この星でいちばん美しい愛の物語

小説

花風社

チンギス・アイフマートフ(浅見昇吾訳)

<伝統を乗り越えて生きた二人の愛と勇気の物語>

「女の幸せは,子どもを産んで家をきちんと守っていくことにあるんだ」この姑(しゅうとめ)のせりふだけを聞いたら,かつての日本の話だと思うかもしれませんが,これはキルギス共和国出身の作家の作品なのです。

古風なしきたりを重んじる村では,戦場の夫が父母をさしおいて妻あての手紙を書くなどもっての外。ジャーミリアは,悲しみと孤独に耐え,明るくけなげに振舞っていますが,ある日,帰還兵のダニヤールと出会います。二人の魂(たましい)は豊かな歌声を通じて固く結びつき,何もかも捨てて村から命がけの脱出を図ります。ジャーミリアの義弟セイットの目を通して描かれる,二人の魂の結びついていくさまが,たいへん美しく感動的です。(Sさん)