中学生のための国語のおすすめ50冊

ぶらんこ乗り

ぶらんこ乗り

小説

新潮社

いしいしんじ

<おたがいにいのちがけで手をつなげるのは,ほかでもない,すてきなこととおもうんだよ>

ぶらんこが上手でとても賢い弟。そんな天才少年の残していったノートの束を読み返して弟を思い出す高校生の私。事故で声が出せず,動物と話をするようになって,このノートには奇妙な話が増えた。でも,そのすてきな作り話は「本当の話」だったのだ。そして,絶望の淵に立たされた私を「この世にしっかり押しとどめるため」,弟は「命がけの手で私を支え」てくれた。もうここにはいない弟を思いながら,ぶらんこがちょうどいい引力に従って戻ってくるように,いつか弟が戻ってくることを信じている私。個性的な家族が互いに思いやる姿もいいし,弟の作り話も機知に富んでいておもしろい。不思議な後味が残る作品だ。(Wさん)