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河北新報のいちばん長い日 震災下の地元紙

河北新報のいちばん長い日 震災下の地元紙

記録

文藝春秋

河北新報社

〈巨大な津波が,船を,車を,住宅をのみこんだ。街が消えた。〉

2011年3月11日午後2時46分,三陸(さんりく)沖を震源としたマグニチュード9.0,最大震度7の激震。東日本大震災だ。この地震は,東北地方の地域新聞社も襲(おそ)っていた。

家族と連絡が取れない。機械も,販売店も,届ける家も,全て地震が奪っていった。今でも救出を信じて待っている人がいる。そんな中で新聞を作る必要があるのか。河北新報の新聞記者たちは自問自答しながら,それでも新聞を作り続けた。

電気が止まり,食料が,ガソリンが尽きる。それでも,手元に届く新聞だけを頼りにしている避難者がいる。「われわれはみな被災者だ。そして,河北新報は東北の人たちと共に歩む地域紙だ。」そう心に決めて新聞を作り続けた,震災下の河北新報社の記録。

震災翌日,河北新報は次のようなメッセージを被災者に送った。 「生きてほしい。この紙面を避難所で手にしている人も,寒風の中,首を長くして救助を待つ人も絶対にあきらめないで。あなたは掛け替え(かけがえ)のない存在なのだから。」

あの地震はまだ,終わっていない。東日本大震災の現実を知ることができる本です。(Sさん)