中学生のための国語のおすすめ50冊

夏の花たち-ヒロシマの献水者(けんすいしゃ) 宇根利枝物語

夏の花たち-ヒロシマの献水者(けんすいしゃ) 宇根利枝物語

小説

ひくまの出版

鈴木ゆき江(すずきゆきえ)

<1945年8月6日,水を求めて亡くなった多くの人々の思いを忘れないで・・・>

大好きだった祖母を亡くしたばかりの中学生のゆきは,平和公園で宇根利枝さんに出会います。宇根さんは50年もの間,原爆で亡くなった人たちの慰霊碑(いれいひ)に献水供養(けんすいくよう)を続けているおばあさんです。1945年8月6日,当時26歳の宇根さんは陸軍兵器支廠(ししょう)の託児所(たくじしょ)の保母をしていて被爆(ひばく)しました。幸いけがはなかったものの,山の防空壕(ぼうくうごう)付近で生き地獄を見て言葉を失います。その時,苦しみながら「水を,水を」と訴える被爆者達に対し,宇根さんは,「水を飲ませたら死んでしまう」と聞いていたので,心を鬼にして水を飲ませませんでした。結果的に,のどの渇(かわ)きを感じながら死んでいき,そのことを宇根さんは忘れることができませんでした。

ゆきの祖母も被爆者でした。しかし,祖母は原爆について何も語らないまま亡くなりました。宇根さんを通して祖母の気持ちを理解し,成長していくゆき。宇根さんとその志を受け継ぐ若い人たちの心温まるお話です。(Tさん)