愛知の文学

若山牧水

作品地域分類作者

鳳来寺(ほうらいじ)

新城市 短歌 若山牧水(わかやまぼくすい)
  • 若山牧水
    (わかやまぼくすい)

若山牧水は,明治18(1885)年に宮崎県で生まれる。全国を旅しながら,自然と人生を深く観照した歌で知られる。旅と酒を詠んだ歌の数は近代歌人随一である。代表歌集は『海の声』で「幾山河(いくやまかは)越えさりゆかば寂しさのはてなむ国ぞ今日も旅ゆく」「白鳥(しらとり)は哀(かな)しからずや空の青海のあをにも染(し)まずただよふ」の有名な歌が収められている。昭和3(1928)年に死去。
紹介した五首はともに鳳来寺を訪れた折の作。第一首は医王院下の岸壁に銅板の碑がある。第二〜五首は,牧水の最終歌集『黒松』に「峡(かひ)のうす雲」の題で詠まれた十首からの抜粋(ばっすい)である。牧水は鳳来寺を訪れた折のことを,『鳳来寺紀行』という紀行文にもつづっている。

作品

仏法僧仏法僧となく鳥の声をまねつつ飲める酒かも
盃に立つ湯気よりもあはれなれ湧きて消えゆく峡(かひ)のうす雲
降り入れる雨のひびきをわが聞くやわがまなかひの雨のひびきを
枝垂れてそびゆる檜(ひのき)むかつ峰(を)の森のなぞへに黒みたる見ゆ
合歓(ねむ)の木ぞひともとまじれる杉山の茂みがあひに花のほのけく