愛知の文学

松並木(まつなみき)の堤(つつみ)

作品地域分類作者
松並木(まつなみき)の堤(つつみ) 津島市 野口米次郎(のぐちよねじろう)
  • 野口米次郎ブロンズ像
    (津島市天王川公園)

野口米次郎は明治8(1875)年に愛知県津島(つしま)市に生まれる。明治26(1893)年に渡米して放浪の後,詩人ミラーに師事して勉学に励む。後に渡英して詩集『From The Eastern Sea(東海より)』を出し,国際詩人としての名声を得る。象徴的叙情詩人として評価され,「ヨネ・ノグチ」の筆名で外国では知られている。『二重国籍者の詩』『表象抒情詩』などの詩集がある。昭和22(1947)年死去。

「松並木の堤」は,天王川の堤上の松並木を静かに歩んでいく作者がいつのまにかヨーロッパ中世の騎士道伝説の世界に引き込まれていく様子をうたっている。時間がゆったり流れる秋の日の,次々と空想が広がる夢多き作者自身の姿を描き出している。

作品

私の郷里に松並木の堤がある,
その上を歩くと想像する,
(実際には無いが)清い河一筋が堤の脇を流れてゐる,
雲の工合(ぐあひ)で河の面が晴れたり陰つたりしてゐる。
風に擽(くす)ぐられて笑つたり叩(たた)かれて渋面(じふめん)作つたりしてゐる。
『これは沢山の塔があるキヤメロツトの都へ通ずる河かも知れない』と