愛知の文学

椰子(やし)の実

作品地域分類作者
椰子(やし)の実 田原市 島崎藤村(しまざきとうそん)
  • 島崎藤村
    (しまざきとうそん)

島崎藤村は明治5(1872)年に木曽馬籠(まごめ)で生まれる。明治26(1893)年,北村透谷(きたむらとうこく)と雑誌「文学界」を創刊,清新な浪漫的叙情歌人として文学的出発をした。明治30(1897)年から34(1901)年にかけて,『若菜集』『一葉舟(ひとはぶね)』『夏草』『落梅集』を発表し近代詩を確立した。その後小説に転じ,『破戒(はかい)』『家』『夜明け前』などを著した。昭和18(1943)年に死去。

  • 「椰子の実」の詩碑
    (田原市伊良湖岬)

「椰子の実」は,『海上の道』にあるとおり,伊良湖岬の浜に椰子の実が漂着したのを発見した柳田国男(やなぎたくにお)の話を聞き,藤村が詩にしたものであり,大中寅二(おおなかとらじ)作曲の歌としても愛唱されている名編である。この詩の収められている『落梅集』には,有名な「千曲川(ちくまがわ)旅情のうた」「小諸(こもろ)なる古城のほとり」もあり,この詩と同じく,故郷を離れた流浪(るろう)の寂しさや人生の憂愁(ゆうしゅう)が五七調の文語定型詩で歌われている。

作品

名も知らぬ遠き島より
流れ寄る椰子の実一つ
故郷(ふるさと)の岸を離れて
汝(なれ)はそも波に幾月(いくつき)