愛知の文学

海上の道

作品地域分類作者
海上の道 田原市 評論 柳田国男(やなぎたくにお)

柳田国男は民俗学者・言語学者。明治8(1875)年に兵庫県で生まれる。東京帝国大学(現,東京大学)政治学科卒業後,農商務省に入る。役職のかたわら,民俗学を研究し,大正14(1925)年,雑誌「民族」を編集して日本民俗学を確立した。民俗学とは,民間の伝承や行事,風俗の歴史を通して,一国の基層文化の特質を研究しようとする学問であり,その視点は本文中にもよくあらわれている。主な著作に『石神問答』『遠野物語』『民間伝承論』『日本民俗学研究』などがある。昭和37(1962)年に死去。
『海上の道』は昭和27(1952)年に雑誌「心」に発表された。そこに展開された,日本人が南方から潮流に乗って島伝いに渡来した,という説は,必ずしも現在認められてはいないが,日本人や日本の文化における南方的要素は学問的にも多く指摘されており,作者の視点はなお今日でも大いに意味を持っているといえる。
なお柳田国男には伊良湖岬の風光を,多くの古典をふまえ,叙情豊かな擬古文で綴った『遊海島記』と題する文章がある。あわせ読んでみたい名編である。

国男は渥美半島の伊良湖岬の砂浜に椰子(やし)の実が流れついているのを見,その話をもとに島崎藤村(しまざきとうそん)が「椰子の実」の詩としたエピソードも書かれている。

  • 柳田国男
    (やなぎたくにお)

  • 柳田国男逗留の地
    (田原市伊良湖岬)

  • 恋路ヶ浜
    (田原市伊良湖岬)

作品

私は明治三十年の夏,まだ大学の二年生の休みに,三河の伊良湖崎(いらござき)の突端に一月余り遊んでいて,あゆの風の経験をしたことがある。