アクティブ地理 インタビュー特集

近畿地方

京町家の町並み保存活動
高安美三子(みみこ)さん

祇園町南側地区まちづくり協議会代表

インタビュー

1995年に京都市が当地区を「歴史的景観保全集計地区」に指定する動きがありました。しかしながら,京都市が主体となっての規制では不十分だと考える住民が多数だったため,市の指定よりも更に上をいく取り決めや制度を住民主体で取り決め,それを実行するために協議会を設立しました。その中に町並み保全活動もふくまれていました。

主に以下の4つの部会に分かれ,連携しながら活動しています。

  1. 当地区に新しくテナント(賃貸ビルに入る店)として入ってくる店が,地区にふさわしい業種かどうかを調べる部会
  2. 建物を新しく建てたり改修したりするときに,協議会で定めた仕様の建物になっているか調べる部会
  3. 地域内の防火や防災を考える部会
  4. 観光客への対応や対策を考える部会

月1回の定例会にて報告・検討しています。

当地区は木造家屋が大多数をしめるため,防火対策には特に力を入れています。地区内には私設消火栓23基,防犯カメラ21台,AED2基を設置しています。また,年に数回防水訓練をふくめた防災訓練を行っております。2019年に近隣9軒を巻き込んだ火災があり,3軒全焼しました。このようなことが再び起こらないように,2021年より屋外型無人火災探知システムの構築を考えています。

基本的に当地区は観光地ではなく商業地です。それを踏まえて,出来るだけ観光客の方々には来訪を控えていただくような取り組みを行っております。地区内の8か所に建てた高札(こうさつ=立て札)には,現在,撮影禁止の表示がされています。これは,地区内個人宅に観光客が無断で侵入したり,家屋内でSNS映えする写真を撮ったりする行為が多発したためです。さらには舞妓(まいこ)さんに対する迷惑行為も増加しています。このような事例に対処するために,2017年より観光問題を考える部会を新設しました。昔ながらの町並みをご覧になりたい気持ちはよくわかりますが,この地区はテーマパークではなく,そこに住む人々の暮らしが毎日流れています。観光に来られる方もそのことを考えて訪れていただければ幸いです。

約20年間の取り組みによって,昨今では町並み保全に関しては難しい案件は少なくなりました。「この地区はいろいろな点で厳しい規制がある町だ」ということが浸透した結果だと思います。

自分たちの町をきれいにしたり,より良いものにしたりしたい時,みなさんはどうされますか?地域の市議会議員さんに頼んだり,区役所の担当部署の人たちに頼んだり,町おこしを専門とする業者に頼んだり,色々手段はあると思います。でも,まず自分たちが一番最初に動いて考えてください。何事をするにもまず,住民が手を付けなければ行政は手伝ってくれません。それに自分たちのやりたいことが伝わりません。中学生のみなさんが自分の町を良くしたいというエネルギーをまず,自分たちの町にぶつけてみてください。良くしようという気持ちは自分たちの行動から始まります。