アクティブ地理 インタビュー特集

中国・四国地方

馬路村にIターン!
山田佳行さん

木材加工会社「エコアス馬路村」

インタビュー

高知市のベッドタウン,いの町で育ちました。人口2万7000人ほどの町です。JRも路面電車も走り,高速道路のインターチェンジのすぐそばに家があり,何に乗るにも交通の便のよいところです。
馬路村に来る前は,親元を離れ岡山県備前市で働いていました。備前市は赤レンガの工場がいっぱいあり,国道2号線が通りトラックが多く,古くからの工場がある古くからの町というイメージでした。新幹線も通り,交通の便がよく,コンビニもあり,不自由なく生活できる都市である割に,田や畑があり,近くに海や山などの自然にめぐまれ,不思議な場所なイメージでした。

高知県に帰って働こうと思い,大阪市内で行われていた高知県企業のみの企業説明会に出かけました。高知県人なら誰もが知っている企業がほとんどでした。唯一,内容のわからない企業が,この馬路村のものでした。これから新しく立ち上げる馬路村の企業(後のエコアス馬路村)は,森林整備を行い,木の加工品をつくり,馬路村の情報発信をするということでした。それらのことは,そのブースで初めて知りました。馬路村には10年前に来ました。

岡山県の備前市で一人で暮らしていたので,馬路村に移住するというより,高知県に帰ってくるという感覚でした。当時は独身だったので,個人で判断して決断しました。
田舎といっても,同じ土佐弁を話す人の土地。車さえあれば生活のことはたいがい何とかなるという思いでした。

「エコアス馬路村」の広報・営業活動です。実際に木材を加工することはありません。 MONACCA(モナッカ,木の加工製品のかばん)を持って町に売り込みに行ったり,製品や馬路村のPRを行ったり,情報を村に持ち帰る,人と人とを結びつけるような仕事です。海外にも売り込みに出かけています。ヨーロッパや,ニューヨークの展示会にも行きました。最近は北米方面も力を入れています。
喜びが大きいのは,やはりモノが売れるときで,やりがいのある仕事です。

とにかく静かです。特に夜は何の物音もしません。
あとは,欲しいものが欲しいときに買えません。例えば,村にある農協のAコープは6時に閉まるため,仕事帰りにちょっと寄るということができません。また,町のスーパーとは規格が違います。しかし,慣れてくればどのようにも対応できるし,普通のこととして受け入れられます。祖父母の実家は馬路村よりもっと田舎でした。そのため田舎に抵抗感はあまりありません。
馬路村は人が住める地域が少ないため,住宅が密集して建っています。住んでいる人口(1050人ほど)の割りに家が多いなぁという感じがしました。
それから,信号がありません。バスは1日4便で,土日だと3便に減ってしまいます。しかしそれを心得ていれば,車もあるし,どのようにも対応できています。
馬路村に来るにあたっては,新しい職場で新しい仕事をする,高知に帰って仕事ができるという期待感の方が大きかったです。

来る人に対してとても親切な村です。もともと林業関係で人の出入が多い村だったという関係もあるのでしょうが,わたしが村で住むことも歓迎してくれました。お祭りにも参加しています。村に来た当初は独身だったため,近所の人が心配しておかずを持って来てくれました。
人との交流が多く,自分の子どもも地域の大人たちが見守ってくれている感じです。地域の子どもとして接してくれているのがありがたい。いいことをしたらほめてくれる,悪いことをしたらしかられるという当たり前のことが当たり前に行われているところが非常にいいところです。自分は仕事で家を空けることも多いので,こういうところは本当に助かります。

病院,医療関係です。村には診療所が1軒しかありません。また,専門医ではないので,何か急病があったら,30分かけて近隣の町の救急病院に行かなくてはいけません。救急車を呼ぶと,往復で1時間かかったりします。最近はヘリポートを設けるなどして改善されていますが,町に比べると医療の点で不安はあります。
子どもが生まれる時も同様でした。早いうちから妻は自分の実家の方に預けました。早めに対処できれば何とかできます。

とにかくめぐまれた自然の中での生活。夏が暑ければ川で涼めます。食べ物がおいしい。生活する楽しさがあります。