世界史おすすめ50冊

科挙

中公新書 / 宮崎市定

中世・近世 中国 政治・社会

中国では妻がみごもったことがわかると、傍らで詩経という書物を読んで聞かせたという時代がある。科挙に合格できる賢い男の子が生まれて欲しいという一種の胎教である。今から1400年以上も前にでき、20世紀まで存続した官吏登用試験制度「科挙」を通じ、多くの事例を紹介しながら中国社会を解明する。

6世紀までの中国は、貴族主義全盛の時代であり、地方には有力な貴族群がはびこっていた。彼らは貴族連合政権ともいうべき地方政府を形成し、帝王権力もこれには一目をおかなければならなかった。時には自分達の家柄は天子よりも古いと自慢し、天子の権利をないがしろにした。この貴族のわがままに我慢しきれなくなったのが隋の文帝であった。

文帝はそれまでの地方政府における貴族の世襲的な優先権を廃止し、地方の高等官はすべて中央から任命派遣するよう改めた。そのためには、中央政府はいつも多量の官吏予備軍を持っていなければならず、こうした官吏有資格者をつくるために始めたのが、世界的にも有名な中国の官吏登用試験制度、科挙であった。

科挙という凄惨なまでの試験地獄を生み出した中国社会の本質に迫る。