世界史おすすめ50冊

世界史を動かした「モノ」事典

日本実業出版社 / 宮崎正勝(まさかつ)他

「政治史」だけでは捕らえきれない「日常生活」の歴史的大変動を、具体的な「モノ」に着目しながら記述している。レンガ・マッチ・サツマイモ・ワインなど90ほどの「モノ」の背後に秘められた、意外な世界史の逸話を、各2〜3ページで分かりやすく解説する。

人類の創造物であり財産でもある「モノ」から世界史の動きが見える。たとえばハンバーガーの起源と歴史について、次のように書かれている。

モンゴル人はビタミンを補給するため生肉を好み、それがヨーロッパに伝播して「タルタル・ステーキ」と呼ばれた。「タルタル」とはヨーロッパ人がギリシア神話にちなんでモンゴル人を恐怖の対象として表現した呼び名である。馬の生肉を細かく切って、たたき、ステーキ状にしたタルタル・ステーキは、モンゴル支配下のロシアに伝えられ、それがドイツにも伝わった。固い牛肉を食べざるを得なかったドイツの貧しい人々は、肉を細かくきざんで食べるステーキを食文化に取り入れ、焼いて食べた。それがロシアとの交易もあった港町ハンブルクで、「ハンブルク・ステーキ」と名付けられた。そして、1850年代ドイツからアメリカへ渡った移民によって“ハンバーガー”が開花した。

1つの「モノ」から見えてくる世界史の動きを、複数の著者がそれぞれ独自の視点でコンパクトにまとめていて、たいへん読みやすい。