生物の多様性と共通性

共通祖先と「最初の生物」

地球上にいるすべての現生生物は細菌(バクテリア),アーキア(古細菌),真核生物(ユーカリア)の3つのグループに分類されている。この3つのグループの系統関係は,遺伝子の比較から図1のようになることがわかっている。

地球上にいるすべての現生生物の共通祖先をLUCA(Last Universal Common Ancestorの略)ということがあり,図1では細菌が分岐した分岐点に位置することになる。

図1 3つのドメインと共通祖先

図1に示した現生生物の共通祖先が,地球に出現した「最初の生物」であるのだろうか。これまで地球上に生息した生物群が図1に示された3つだけだと考えるならば,図1の共通祖先(LUCA)は地球上の「最初の生物」ということになる。

ところが,現在の3つの生物群の共通祖先の前に分岐した生物群Xが存在したと考えた場合,図2のような分岐図になる。図2では,現在の3群と,絶滅したX群が分岐した分岐点に位置するものが共通祖先であるので,現生生物の共通祖先(LUCA)は「最初の生物」とはいえないことになる。

図2 絶滅した生物群Xを加えた場合の分岐図

原核生物の化石と考えられるものも見つかっているが,X群の化石が発見されるとは限らない。また,仮に新たな生物の化石が見つかったとしても,そこに完全な形でDNAなどの分子情報が検出される可能性は低く,それがX群のものかを判定することは今のところ極めて難しいと思われる。さらに,X群のほかにも絶滅した生物群がいた可能性も否定できない。

「最初の生物」は現生生物からみるとかなり不完全なものであったとも考えられ,1つでなく複数のものが並行して誕生して,それらが合体して現生生物の祖先になったことも考えられる。そうなると,「最初の生物」は,現生生物から考えたときの「生物の特徴」(生物の定義)にあてはまっていない可能性もある。

このように考えると,地球に出現した「最初の生物」を推定することが極めて難しいことが分かる。

【参考ウェブ】

  • 更科功. “全生物の「共通祖先」は「地球最初の生物」ではなかったかもしれない”. 講談社. 2019. https://gendai.media/articles/-/68823