【研究の研究】Bさん

研究内容の概要を教えてください。

島に生息する鳥類を用いた進化と生態の研究です。何年にもわたり特定の個体群を調査し続けて,血縁関係や繁殖成功のデータを蓄積することで,現在進行形の進化をとらえたいと考えています。中心テーマは小さな個体群で行われる近親交配とその関連現象です。ですが,生命現象は遺伝子から集団の動態まで様々な側面が密接にかかわりあっています。そのため,遺伝子から行動や個体数までの広範なデータを集めながら,形態記述(注1)のような基礎研究から保全に向けた個体群動態解析のような応用研究まで,幅広い分野をまたぐ研究を行っています。

研究者もしくは生物学の道を志したきっかけはありましたか?

もともと生き物好きでしたが,高校で数学の面白さを知り大学入学時は数学科を選びました。しかし入学後,自身が本当に得意なものややりたいことは何かを改めて考え,生物学科に転科しました。とはいえ,数学が好きなことは変わりません。今は,数字に強い生物学者になることで,独自性と強みを確立することを目指しています。

学生時代のようすを教えてください。

高校入学当初,数学の授業がわからなくなり「これはまずい」と思い,そこから数学の勉強を頑張りました。そうしたらむしろ数学は得意になりました。まわりの生物系の人は数学が苦手という方も多いので,そこで身に着けた数学力は今でもとても役に立っています。こう書くと勉強ばかりとも思われそうですが,高校時代は軽音をしていて毎日のように楽器の練習をしていました。

研究の世界に入る前に抱いていた「研究」のイメージと,入ってからの実際のようすに差はありましたか?

どちらかというと一人黙々と研究しているイメージでしたが,実際には多くの人たちが日々の生活から学会の懇親会の場まで,さまざまな場面で周りの人たちとたくさんコミュニケーションをとりながら研究を進めていることを知りました。

    研究者としての将来の展望がありましたらお聞かせください。

    私が今従事している島の鳥の調査は約20年続いています。私はこれを引き継ぎ,この長期研究を維持したいと考えています。しかしこれは私一人の力では実現できません。大学教員となり学生とともに研究を行いたいと考えています。また,大学院時代の指導教員の言葉を借りると,100年後も色あせない価値ある基礎研究を未来に残したいと思っています。

    注1

    形態記述  生物の形態的特徴を明らかにし,それを論文などの形で記録として残すこと。