【進化でつながるヒトと世界】ヒトらしい行動はどのように生まれるのか

 ヒトが複雑に物事を考えられるのはなぜ?

魚,カエル,ワニ,ネズミ,チンパンジー,ヒトの脳で共通なのは大脳,間脳,中脳,小脳,延髄があることである。ヒトの脳は,他の動物に比べて大脳が大きく,大脳新皮質が最も発達している。これにより,ヒトは高い認知機能をもち,高度な精神活動が可能であると考えられている。

 ヒトの脳はどのように進化した?

ヒトの脳の進化は,化石から脳の大きさや発達している部分を推測することで知ることができる。アウストラロピテクスの脳の大きさは,ゴリラなどの現生類人猿と同程度であるが,狩猟採集民となったホモ・ハビリスからは急激に脳が大きくなり,ホモ・サピエンスではおよそ3倍の大きさになっている。ホモ・サピエンスで特に発達しているのは,言語機能や記憶に関わる側頭葉という部分で,旧人類より20%ほど大きい。また,全身の感覚情報を解釈し,統合する頭頂葉という部分もホモ・サピエンスの方が相対的に大きい。これによって,ホモ・サピエンスは言語や記憶に優れ,複数の仕事を同時にこなすことや,抽象的な思考をすることができると考えられている。

 なぜヒトだけ脳が大きくなったのか?

脳は多量のエネルギーを消費するので,脳を大きくすることは簡単ではない。ヒトは,他の哺乳類と比べて,脳が大きい代わりに,腸は短い。ヒトと同じくらいの体重の哺乳類と比べると,脳の大きさはヒトの約5分の1,腸の長さはヒトの約2倍になっている。肉を食べるようになったり,食物を調理したりするようになったことで,消化に要するエネルギーが少なくなり,より効率的にカロリーを摂れるようになった。そのため,腸が短くなっても生き延びられたと考えられている。脳と同様,腸も多くのエネルギーを使うので,腸に使用していたエネルギーを脳に使うことができた。このように,肉食の増加や食物の調理が脳の増大につながったと考えられている。食料や獲物の情報などを共有し,協力する必要のある狩猟採集民にとって,脳が大きいことは有利に働いたと考えられる。

キーワード

#多様性

それぞれの環境には,そこに適応した多様な生物が生息している。