【進化でつながるヒトと世界】ヒトのからだと環境の関係は…

 気温が変わるとヒトの体温はどうなる?

ヒトのからだの内部の体温の変動は通常1℃~2℃の間でほぼ変わらない。ヒトは自ら熱を生産したり放熱したりすることで,体温を一定に保っている。例えば,ヒトは寒いときにはふるえて熱生産を上昇させて体温を上げている。また,暑いときには汗をかいて放熱して体温を下げている。

 動物の体温調節

現生の動物たちは非常に多様な生活様式をもっている。体温の調節のしかたもまた動物によってさまざまである。脊椎動物の中で,自ら熱を生産したり放熱したりして体温を保つのは鳥類と哺乳類である。魚類や両生類,は虫類の多くは体温調節を外部の熱源に頼っている。これらの動物は,外から熱を容易に取り入れることができ,体温を上げる必要があると,周辺の暖まりやすい日なたなどに移動して,外から熱を取り入れる。自ら熱を生産する動物は,外部の熱源に頼る動物にとっては寒すぎる気候の場所でも生きることができるが,その分多くのエネルギーを必要とする。そのため,気温が高く比較的変動の少ない熱帯地方には多くのは虫類が,温帯や寒帯には哺乳類が多く分布している。

 ヒトはどのように体温を保っているの?

ヒトは気温が高いとき,低いときには下の図のように自律神経系と内分泌系が協調して働くことで体温を保つ。

体温が低下した場合

①体温の低下を視床下部が感知。
②ホルモンの分泌が促進され,交感神経が働く。
③皮膚では立毛筋や血管の収縮が起こり,熱の放散が抑制される。代謝や拍動の促進によって熱の発生が増加する。
④体温が上昇する。

体温が上昇した場合

①体温の上昇を視床下部が感知。
②副交感神経や交感神経が働く。
③代謝や拍動の抑制によって熱の発生が減少する。皮膚では発汗や血管の拡張が起こり,熱の放散が促進される。
④体温が低下する。

 ヒトの暑さへの適応

ヒトは汗腺の数が他の哺乳類と比べて非常に多い。気温が高いとき,ヒトは汗をかくことによって熱を放散する。ヒトは毛がほとんどないので,体表から水が容易に蒸発し,その際に熱が奪われる。

ヒトに毛がほとんどないのは汗による体温調節が発達したためという考えがある。寒冷化により主食としていた果実を安定して得られなくなると,ヒトは食物を探すために,昼間の熱帯の草原の猛暑の中で長距離を歩くようになった。ヒトは速く走れないため,肉食動物が活動する夜間を避けて行動する必要があった。ヒトに毛がほとんどないのは,このような暑さへの適応と考えられているが,はっきりとは分かっていない。

キーワード

#多様性

それぞれの環境には,そこに適応した多様な生物が生息している。