【進化でつながるヒトと世界】ヒトはどの生物と似ているか

 ヒトは,キノコと植物ではどちらの方が近い関係にある?

ヒトとキノコと植物では,細胞からできていること,エネルギーを利用して生命活動を行うこと,DNAに遺伝情報をもっていることといった共通の特徴がある。このことから,これらは共通の祖先から進化してきたと考えられる。

では,ヒトとキノコと植物はどのように枝分かれしたのだろうか。下の図のような3通りの進化の道筋(系統)が考えられる。

ヒトとキノコではエネルギーをグリコーゲンの形で貯蔵する点が共通している。キノコと植物ではともに細胞壁をもつ。ヒトと植物ではともに地上で大きな体をもつが,キノコの本体である菌糸とよばれる部分は地中にあることが多い。上の3つの図のうち,どれがもっとも正しいと考えられるだろうか。

少数の特徴だけで系統関係を推測することは難しいが,多数のDNAなどの分子情報をくらべると,よりもっともらしい系統関係を推測することができる。下の図は,多数の分子情報をくらべて作られた系統樹である。近年の研究では,下の図のように,植物よりもキノコ(菌類)の方が,ヒト(動物)と近い関係にあると考えられている。

 進化の道筋の求め方

生物の進化の道筋(系統)を知るには,姿かたちや生活のようす(形態)を根拠とするほかに,分子情報も根拠として重視する。分子情報とは,生物がもつDNAの塩基(A,T,C,G)の並び方や,タンパク質を構成するアミノ酸の並び方のことである。分子情報をもとに脊椎動物の系統関係を調べると,下の図のようになる。

鳥類と哺乳類はともに恒温動物であるという点で共通しているが,分子情報をもとに系統関係を調べると,哺乳類よりも は虫類の方が鳥類と近い関係にあることがわかる。

キーワード

#系統

生物の進化の道筋。

#分子系統解析

DNAの塩基(A,T,C,G)の並び方や,タンパク質を構成するアミノ酸の並び方は,近い関係のものほど違いが少ない傾向にあることから,塩基やアミノ酸の並び方を比べて生物の系統関係を推定する方法。