オオガハスとは
オオガハスは,1951年に千葉県検見川(現在の千葉市花見川区)で,植物学者である大賀一郎博士と地元の小中学生たちによって発見されました。泥湿地の中から見つかった3つのハスの実。そのうちの1つが,翌年の1952年7月18日,見事に花を咲かせたのです。

このハスの実は,約2000年以上前(縄文時代)のものだと推定されました。これは,古い地層から発掘され,発芽・生育に成功した花として当時世界最古の記録です。
植物の種子は通常,数年ほどしか寿命がありませんが,マメ科やハス科のように厚く硬い皮を持つ種子は,特別な条件が揃えば長生きできると言われています。オオガハスは,ハス科植物の種子が,長期にわたり生存できることを実証したのです。
オオガハス発見に至る博士の道のり
大賀博士には,古代のハスを発芽させるという強い信念がありました。かつて,友人の考古学者から譲り受けた約1200年前のハスの実を,発芽させることに成功した経験がありました。しかし,助手の不注意で枯らしてしまい,大変なショックを受けます。

写真の人物:大賀一郎博士 出典:国立国会図書館「近代日本人の肖像」 (https://www.ndl.go.jp/portrait/)
その失意の中,大賀博士は井の頭自然文化園で,蓮の果托(実がつく部分)を目にします。これは,譲り受けた実よりもさらに古い,約2500年前のものと推定されていました。残念ながら実は残っていませんでしたが,博士は「果托があるなら,蓮の実も必ずあるに違いない」と確信を募らせます。
そして,その強い思いのもと,自らスコップと発掘資金を持ち,発掘調査に赴いたのです。そして,地元の小中学生たちも交えて行った発掘で,ついに3つのハスの実を発見しました。
博士の努力は実を結び,見事オオガハスは開花しました。しかし,そこで新たな問題が。発掘した実を全て発芽実験に使ってしまったため,年代を正確に測るための実が残っていなかったのです。
そこで,博士は同じ場所で見つかった丸木舟の一部をアメリカに送り,放射性炭素年代測定法を依頼しました。測定を依頼した研究者は、この測定法を発見した研究者で、後にノーベル化学賞を受賞しています。博士はその結果を待ちに待ち,ついに届いた書簡を見た時は,涙を流して喜んだそうです。この測定法では丸木舟の一部は約3000年前のものと推定されましたが,考古学などと総合的に判断し,博士はオオガハスの年代を約2000年前のものと推定しました。
2000年以上の時を超えてよみがえったオオガハスは,ただ美しいだけでなく,一人の植物学者の熱意と,科学の力が生んだ奇跡の物語を私たちに伝えています。
【参考資料】
- 大賀ハス開花70周年記念事業実行委員会. “大賀ハス開花70周年記念誌” 31 March 2023. https://www.city.chiba.jp/toshi/koenryokuchi/ryokusei/kaika70kinenshi.html
