学習

学習の進化

生物がどういった刺激に反応して学習行動を見せるかは,生得的に(遺伝的に)決まっている。

ヨーロッパにはシロエリヒタキとマダラヒタキという,さえずりをする鳥が生息している。この2種の間では,ヒナが他種よりも同種のさえずりに強く反応することから,ヒナが「どの種のさえずりを学習するのか」が遺伝的に決まっていることがわかっている。たとえば,ふ化前のヒナが卵の中で親の鳴き声を学習する可能性を排除するために,卵を他種に世話させても,ヒナは同種のさえずりに強く反応するのである(図)。

自然界では,複数の種が共存している。さまざまな種のさえずりが存在する中から,効率的に同種のさえずりを学習するように自然選択がかかることで,特定の刺激(同種のさえずり)にだけ反応して学習するという性質が進化してきたと考えられる。

類似の現象として,ヒトの子は周囲の大人から音声言語を学習するが,庭にいる鳥のさえずりを学習することはない。また,ヒトの子は音声言語を生まれつき学習対象とするため自然と学ぶが,読み書きは生まれもっての学習対象ではないと考えられている。

【参考文献】

  • Wheatcroft , D. & Qvarnström , A . 2017 Genetic divergence of early song discrimination between two young songbird species. Nat Ecol Evol . 1, 0192