【進化View】島嶼化 – フォスターの規則

(とう)(しょ)化 – フォスターの規則

世界中には様々な気候があり,様々な生物が適応している。クマなど哺乳類を例に,近縁な種どうしでからだのサイズを比べてみると,寒い地方の種はからだが大きくなり,暑い地方の種類の種はからだが小さくなる傾向が見られる。これをベルクマンの規則といい,気候に対する適応の結果であると考えられる。

しかし,動物のからだのサイズが変化する要因は気候ばかりではない。島の環境に生息する種では,大陸や大きい島に生息する近縁な種に対して,からだのサイズが変化することが観察されている。

大型哺乳類においては,小さい島に生息する種は,大陸や大きい島に生息する近縁の種と比較してからだが小さくなる傾向が見られる。屋久島に生息するヤクシカは体高約80㎝であり,本州に生息するニホンジカは体高約90㎝である。また,沖縄に生息するリュウキュウイノシシは体長90~140cmであり,本州に生息するイノシシは体長150~170cmである。このように島において近縁な種のからだのサイズが変化することを(とう)(しょ)化(フォスターの規則)という。

どうしてこのような変化がおこるのだろうか。島嶼化がおこる理由として,食料資源の制限,捕食や競争などの要因が考えられている。

小さい島は,大陸や大きい島に比べてえさとなる資源 が少ない。そのため,島で生息できる個体数は制限される。一方で,個体数が少なくなると近交弱勢の影響などにより,個体群の絶滅のリスクが高くなる。からだのサイズが小さくなれば,1個体が利用する資源が少なくすむため,個体数を多くすることができる。こうして,島に生息する大型哺乳類は,からだのサイズを小さくすることで,個体群が存続できる個体数を確保するように進化したと考えられている。

一方,小型の哺乳類,爬虫類,昆虫などでは,島嶼化によってからだのサイズが大きくなることがある。小型の動物は捕食者から逃れる必要があるが,捕食者がいない島の場合,捕食者から逃れる必要がないため,からだのサイズが大きい方が生存しやすくなる。また,小型の動物なので,少ない資源でも競争が起こりにくく,存続に十分な個体数を維持できる。

このように,生物のからだのサイズの進化は,どのような自然選択がかかるかによって変わってくる。さまざまな近縁の種におけるからだのサイズの違いを比べてみると興味深い。

図1:島での動物のからだのサイズは,大陸でのサイズが小さいと大型化し,大きいと小型化する傾向がある。小さい島,大陸から離れた島ほど,この傾向は大きくなると考えられる。

【参考文献】

  • Benítez-López A, Santini L, Gallego-Zamorano J, Milá B, Walkden P, Huijbregts MAJ, Tobias JA. The island rule explains consistent patterns of body size evolution in terrestrial vertebrates. Nat Ecol Evol. 2021 Jun;5(6):768-786